【18年物故者追悼】「鉄人」衣笠祥雄さん 死去4日前に魂の解説

[ 2018年12月29日 08:00 ]

現役時代の衣笠祥雄氏
Photo By スポニチ

 2018年、平成最後の年末を迎えた。プロ野球は広島が3年連続でセ・リーグを制覇。パは西武が10年ぶりの栄冠に輝き、日本シリーズではソフトバンクが底力を見せた。一方でプロ、アマ球界を支えてきた関係者の訃報も届いた。国民栄誉賞を受賞した元広島の衣笠祥雄さんは4月23日、上行結腸(じょうこうけっちょう)がんで71歳で死去。また、相撲界など他のスポーツ界からも訃報が届いた。

 4月19日。亡くなるわずか4日前、衣笠さんは横浜スタジアムの放送ブースにいた。一人では歩けず、親族に付き添われて球場入り。BS―TBSが中継したDeNA―巨人戦の解説を務めたが、体は痩せ細り、声もかすれていた。実況を務めた戸崎貴広アナウンサー(56)は「普通の人なら球場に来ることもできなかったでしょう。涙が出そうでした」と振り返る。

 話すこともつらそうな状態に、戸崎アナはコメントを求めるのをためらった瞬間が何度もあったという。すると、衣笠さんは自ら手を挙げて話したいとの意思を示し、巨人・坂本勇の打撃などについて熱く語った。現役時代、前人未到の2215試合連続出場の偉業を達成した「鉄人」は、己の人生の最後まで「鉄人」だった。

 憧れは同じ三塁手の長嶋茂雄。巨人戦で本塁打を打つと、三塁ベースを回る時にミスターが「ナイスバッティング。うまく打ったな」と声を掛けてくれる。それが何よりうれしかった。87年に現役引退。以後、指導者としてユニホームを着る機会には恵まれなかった。実は、長嶋監督から巨人のコーチにと誘われたことがあった。しかし「広島にお世話になったので」と断ったとの逸話がある。

 今季、その広島はリーグ3連覇。赤ヘルの黄金期を支えた衣笠さんは優勝を5度経験も、最高は2年連続だった。チーム初の快挙を、きっと天国で喜んでいたに違いない。(鈴木 勝巳)

続きを表示

2018年12月29日のニュース