【青木宣親 観戦記】侍打ち砕いたMLB選抜の「強く振る」信念

[ 2018年11月12日 09:00 ]

日米野球第3戦   侍ジャパン3―7MLB選抜 ( 2018年11月11日    東京D )

<侍ジャパン・MLB選抜>試合前、談笑するヤクルト・青木(右)と侍ジャパン・稲葉監督 (撮影・大塚 徹)  
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 ヤクルトの青木宣親外野手(36)が、スポニチ本紙に日米野球第3戦の観戦記を寄せた。昨季までメジャーで6年間プレーし、WBCにも3度出場。「世界基準」の野球を知る男は、若い選手が国際舞台の経験を積むことの重要さを説き、自身が出場した日米野球の思い出についても語った。

 これぞメジャーのパワーと言っていい2本の本塁打でした。4回のリアルミュートと5回のモリーナ。いずれも右打者が外角球を右翼へ運びました。リアルミュートは、ポイントが体に近い打者。バットを短く持ち、コンパクトに振り抜くので、逆方向にも強い打球がいく。モリーナが打ったのは外角低めの難しいスライダーでしたが、ポール際で切れないのがメジャーの打球。メジャーではとにかく「強く振れ」と、口酸っぱく言われます。

 日本も柳田選手のようにパワーで負けていない打者が増えてきましたが、岡本選手のような才能豊かな若手が国際大会で実力を発揮するには、やはり経験を積むことが大事だと思います。例えば、タイミングの取り方。メジャーの投手はテークバックが小さく、それでいてピッと来る。僕はマリナーズ時代、今回来日しているエドガー・マルティネス・コーチに「足を上げるのはいいけど、上げたらすぐ下ろせ」と、準備を早くするように指導されました。そうしないと、立ち遅れる。

 この試合でも日本の打者はいい角度で打球が上がっても、若干差し込まれているのでフェンスまで届かない場面がありました。動く球もそうですが、打席で多く経験することで、「こうやって対処すればいいんだ」と分かってくると思います。

 僕自身も、日米野球は「メジャー」という目標に向かっていく上で、成長を確認できた場所でした。それには前段があります。早大4年の03年に米国で開催された日米大学野球選手権。初の国際舞台でしたが、相手にはバーランダー(アストロズ)やペドロイア(レッドソックス)ら、のちにスーパースターになる選手もいて、チームは5戦全敗。自分も全く歯が立ちませんでした。内野の頭すら越えない。5試合でボテボテの内野安打1本だと記憶しています。

 そしてプロ3年目の06年。自分も成長している中で、3年前に痛感したレベルの差は縮まっているのか。そんなことを思い、日米野球に出場しました。第3戦では、シーズン15勝の左腕ビダードから先頭打者本塁打。うれしかった思い出があります。日米大学野球で米国に遠征した時に「将来、自分もここでプレーしたい」と初めてメジャーを意識し、そしてこの日米野球で目標が明確になり、自信も芽生えました。

 日米野球の意義も昔とは変わってきています。以前のようなビッグネームはいないかもしれませんが、今回も野手は将来のスター候補ぞろい。侍ジャパンの選手それぞれが何かを感じることができれば、日本野球のレベルアップ、そして東京五輪へとつながっていくのではないかと思います。 (東京ヤクルトスワローズ外野手)

 ◆青木と日米野球 ヤクルト入団3年目の06年に出場。全5試合に先発出場し、22打数5安打、打率・227で1本塁打、3盗塁。第3戦でビダード(オリオールズ)から初回に右翼に先頭打者アーチ。日米野球では日本選手4人目となったが、表の「プレーボール弾」は青木が初めてだった。前回14年の日米野球開催時は、ロイヤルズに所属しており、直前までワールドシリーズに出場。凱旋出場はならなかったが、第2戦の始球式で捕手役を務めた。

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