【石井一久 クロスファイア】9月1日付で楽天GM就任 選手目線で対話できる存在に

[ 2018年8月29日 10:00 ]

楽天のGMに就任、会見で笑顔を見せる石井一久氏(左)と立花球団社長(撮影・篠原岳夫)
Photo By スポニチ

 9月1日付で東北楽天ゴールデンイーグルスのGMに就任することになりました。僕は監督やコーチ経験もないし、フロント経験もない。「大丈夫か?」と心配してくださる方も多いけど、僕なりにいろいろな経験を積んできて、人に負けないだけの「引き出し」は持っているつもりです。僕も勝負師なので、やるからには勝ちたいと思う。

 日本ではまだまだ定着していないGM。僕の野球人生の中では、印象に残っているGMが一人いる。02年にドジャースに移籍した時のGM、ダン・エバンスだ。親しみを込めて「ダニー」と呼んでいる。一番覚えているのは、結果が出なかった1年目のオープン戦。最後の登板となったマリナーズ戦も3回5失点と打ち込まれた。大金を投資したポスティングでの移籍だったため、米メディアからは厳しい批判も受けた。シアトルからロスに戻り、球場の駐車場に行くと、ダニーが待っていた。「オープン戦の結果は全く気にする必要がない。おまえを信じているし、おまえを獲得した自分の目に狂いはない」とハグしてきた。その言葉で気持ちが楽になった。

 初登板の試合、ダニーは心配だからと観客席の最前列で観戦してくれた。僕はデビュー戦から6連勝したが、その間は験を担ぎ、遠征先でも必ず最前列に座った。気温0度の極寒のシカゴでも。「僕がここに座ると、カズが勝つから」と、寒さに震えながら見守っていたという。どんな時も選手に近いGMだった。

 GMの仕事はチームを強くすることが大前提で、そのためには戦力補強もする。しかし、いい選手を獲ったら、それで終わりということではない。選手が困難に立ち向かう時、いかにいいアドバイスを送り、選手目線で対話することもGMの重要な役割だと考えている。就任会見でも話したが、ハプニング的な優勝はいらない。土台をしっかりつくり、5年、10年と優勝争いができるチームにすることが、僕の使命だと思っている。

 最後に。スポニチには約4年間、隔週コラムを掲載してきましたが、今回で一区切りとなります。僕なりの野球観というものが伝わったならば、うれしいです。ありがとうございました。 (本紙評論家) =終わり=

続きを表示

2018年8月29日のニュース