桑田真澄が甲子園で描いた白い線。みちのくのドクターK・吉田も描けるか

[ 2018年8月5日 10:10 ]

秋田大会で全5試合を投げ抜き、チームを甲子園に導いた金足農・吉田
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 もう35年前になるが、今でも思い出す。1983年夏の甲子園。当時、中学生だった私は1年生投手にくぎ付けになった。PL学園のエース桑田真澄だ。アウトローへの直球。スピンが効いて、まさに糸を引くように見えた。巨人時代に当時の印象を伝えた。

 「調子のいいときは、リリースした瞬間からミットに収まるまでのボールの軌道が白い線で描けたんだ」。実際に投げている当事者には、はっきりと見えていた。その言葉に驚き、うれしかった。もちろん、プロ入り後も「白い線」は描けたという。そして好きな赤ワインを飲みながら遠くを見つめた。「もう一度、アウトローに糸を引くストレートを投げたいんだよ」。巨人の晩年。右肘手術から復帰後追い求め、かなわなかった球だった。

 投手の基本は外角低めの直球。打者の目線から最も遠く、そう簡単には打たれない。桑田はそこに切れのある直球を投げられたからPL学園のエースになり、甲子園でも勝つことができた。1年と3年夏に優勝投手となり、2度の準優勝を含めて戦後最多の通算20勝を挙げた。1年夏から5季連続出場して積み重ねた勝利数であり、今後も破られることはないだろう。それだけの大記録である。

 あのときの桑田真澄の姿を追い求め、今年も夏の甲子園を見る。第100回の記念大会が開幕した。記録的な酷暑の中で、継投はもちろん、複数の先発投手をそろえるチームが勝てるチーム。二刀流の根尾を擁する大阪桐蔭がいい例だろう。

 そんな時代に「一枚看板」のチームもある。11年ぶりに出場する秋田の金足農だ。プロ注目のエース・吉田輝星(こうせい)。秋田大会では全5試合、計43回を1人で投げ抜き、57三振を奪った右腕は「甲子園でも全部、自分が投げたい」と宣言する。最速150キロの直球が最大の武器。アウトローへの糸を引くストレートが見られるか。(記者コラム・飯塚 荒太)

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