日本製紙石巻・佐山V3ラン 3・11「忘れずにいきたい」

[ 2018年3月12日 05:30 ]

第73回JABA東京スポニチ大会第1日・予選リーグAブロック   日本製紙石巻5―4JR東日本 ( 2018年3月11日    神宮 )

<日本製紙石巻・JR東日本>決勝の3ランを放った日本製紙石巻・佐山は笑顔でガッツポーズ
Photo By スポニチ

 JABA東京スポニチ大会が11日に開幕し、予選リーグ8試合が行われた。日本製紙石巻は東日本大震災で甚大な被害が出た福島県浪江町出身の佐山航平内野手(21)が決勝3ランを放ち、JR東日本に競り勝った。東芝は福島・聖光学院出身の岡野祐一郎投手(23)が7回2/3を零封し、東京ガスを下した。

 同点の6回2死二、三塁。佐山が直球を振り抜くと打球は高々と舞い、左翼席前列へ吸い込まれた。決勝3ラン。前の打席は好機で凡退し、交代を覚悟していた。そのまま与えられた打席で値千金の一発。「結果を出そうと思った。感触は良かったけど、風のおかげ」と謙遜した。

 中学3年に進む直前に被災した。実家は福島第1原発から10キロ圏内で、翌日に着の身着のまま避難。避難先を転々とし、いわき市に生活の拠点を移した。混乱の中で湯本高に進学し、家族の支えを受けながらプレーを続行。2年の秋、日本製紙石巻の野球教室に参加したのをきっかけに14年スポニチ大会を観戦した。明治安田生命戦で伊東亮大(元楽天)が満塁弾を放つなどしてタイブレークを制した激闘を見て、社会人入りを志した。

 粗削りだが1メートル90、95キロの体格は魅力。前田直樹監督は「一生懸命やっている。我慢して使って良かった」と目を細めた。バックネット裏のスカウト陣からは「いい体してるなあ」と感嘆の声が上がり、DeNA・吉田孝司スカウト部長は「俊敏性がついてくれば(プロになれる)可能性はある」と評した。

 試合前には黙とうし復興の道半ばにある故郷を思った。「東北出身者にとって3・11は忘れられない日だし、忘れずにいきたい」と佐山。決勝弾もまた、忘れられないものになった。 (松井 いつき)

 ▼JR東日本・堀井哲也監督(黒星スタートも4番手投手の)大出がいい内容だったのは収穫。

 ◆佐山 航平(さやま・こうへい)1997年(平9)2月18日生まれ、福島県出身の21歳。小1から野球を始める。浪江中からいわき市立内郷一中に移ってプレーを続け、湯本で高校通算9本塁打。日本製紙石巻入社後は1年目から代打などで出場。1メートル90、95キロ。右投げ右打ち。

続きを表示

この記事のフォト

2018年3月12日のニュース