ハムドラ6鈴木 グラブに刺しゅう「がんばっぺ石巻」「上り坂」

[ 2018年3月11日 09:25 ]

「がんばっぺ石巻」刺しゅう入りグラブを手にする鈴木  
Photo By スポニチ

 3・11に特別な思いを背負うルーキーがいる。日本ハムのドラフト6位・鈴木遼太郎投手(22=東北学院大)は宮城県石巻市出身。東日本大震災当日は中学校の卒業式だった。忘れたくても忘れられない記憶。右腕は被災地を勇気づけるためにも「石巻の星」になることを誓った。

 プロ入り後、鈴木は自身の青いグラブに2つの文字を刺しゅうした。「がんばっぺ石巻」と「上り坂」――。「これから(プロの世界で)困難や壁に当たると思う。つまずいても上っていきたい」。つらい上り坂も、あきらめずに一歩ずつ進んでいく。そこには復興への道を歩む故郷、そして被災地の姿がダブる。

 「忘れたくても忘れられない。震災よりつらい経験はないと思う。野球で悩めるのも幸せ」。11年3月11日。鈴木は中学校の卒業式を終え、祖母の家に向かっていた。午後2時46分、コンビニエンスストアに立ち寄った時に地震が起きた。「目の前のガムの棚に必死でしがみついていた」。そして、故郷はその姿を大きく変えた。

 高校は石巻西に進学。体育館は震災で亡くなった人の安置所となっていた。校庭は駐車場。鈴木はそこで交通整理をし、バケツで水をくんではトイレを流した。さらに支援物資の配布。赤ちゃんのミルクも作った。自分のできることは何か。それを必死に探した。自然と体が動いていた。

 7年後。今はプロ野球の選手となり、日本ハムのユニホームに身を包む。「活躍すればメディアにも出て地元にいい報告ができる」。この日のイースタン教育リーグ・ロッテ戦では、6回に先頭・ペゲーロにいきなり一発を浴びるなど3イニングを4安打2失点。「プロ初黒星」となったが「どうやれば打たれて、抑えられるか。それが分かってきた」と前向きに振り返った。

 「“石巻人”として石巻の星になりたい」。武器は力のある直球と制球力。己の右腕で故郷を勇気づけるために、鈴木は上り坂を上がっていく。 (鈴木 勝巳)

 ◆鈴木 遼太郎(すずき・りょうたろう)1996年(平8)2月18日生まれ、宮城県石巻市出身の22歳。石巻西では甲子園出場なし。東北学院大に進み、2年秋に防御率2.08で最優秀新人賞。3年春、4年秋には敢闘賞を受賞した。17年ドラフト6位で入団。1メートル83、83キロ。右投げ右打ち。血液型A。

続きを表示

この記事のフォト

2018年3月11日のニュース