巨人で進む若手登用 世代交代に抗う亀井

[ 2018年3月10日 10:30 ]

2軍キャンプでファンにサインする巨人・亀井
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 その姿は、2軍のキャンプ地にあった。1軍が練習を行うサンマリンスタジアム宮崎から離れた距離にある、ひむかスタジアム。巨人・亀井は大勢のファン一人一人に、丁寧にサインをしていた。

 コメントを取ろうと待っていた。ランチ休憩の間の約30分間。「亀井さん、こっちも!」の声を聞くと、別の一団のところに足を運ぶ。「ありがとう!」「頑張って!」。そんな声援に小さく頷きながら、黙々とペンを走らせていた。

 世代交代。野球のチームだけに限った話ではない。普通の企業でも、若手社員が成長することでおのずと世代が入れ替わる。これは自然の摂理といってもいい。プロ野球は実力が如実に数字となって表れ、結果が最優先される。ファンの目にも分かりやすい形で世代交代が進むのも道理だ。

 逆説的にいえば、結果を出せば年齢は関係ない、ということにもなる。マリナーズに復帰したイチローは44歳。そして、亀井は35歳。ベテランが時の流れに抗おうとする姿勢が、若手の成長をより促すことにならないか。「黙って譲ってなるものか」――。それでこそ競争が生まれ、組織は活性化する。

 その日、亀井は球団OBで臨時コーチを務める松井秀喜氏と言葉を交わしていた。「元気か、と言われました。バッティングの話はできなかったですけどね」。そう、亀井は元気だ。3日の教育リーグ初戦のヤクルト戦では、3回に同点二塁打。翌4日の西武戦では2ラン本塁打を放った。

 ファンの記憶には鮮明に残っている。昨年6月18日のロッテ戦。亀井は延長12回に逆転サヨナラ3ランを放ち、人目もはばからずに号泣した。今年も、その存在がチームにとって必要になる時は絶対にやってくる。

 うさぎとかめの物語。かめは黙々と歩みを進め、必ずや1軍の舞台に這い上がってくるだろう。巨人の若手登用は進む。球界の選手も、時とともに確実に入れ替わる。それに、最後まで抗ってほしい。ファンに黙々とサインをする姿を見ていて、そう思った。(記者コラム・鈴木 勝巳)

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2018年3月10日のニュース