【石井一久 クロスファイア】牧田、初の海外生活支える野茂さん&朴賛浩の存在

[ 2018年2月28日 11:30 ]

西武時代の同僚でもあるパドレス・牧田(右)を取材する石井一久氏
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 アリゾナ州ピオリアでメジャー1年目のキャンプに臨んでいるパドレス・牧田の元を訪れた。投球練習で地面スレスレのフォームからスローカーブを投げると、周りから「WOW!」と驚きの声が上がる。マイナーには下手投げが2人いるそうだが、緩い球でも勝負できる牧田はMLBでも稀有(けう)な存在だろう。

 異国で初めてのキャンプを送る牧田にとって心強い存在がいる。ともに球団アドバイザーを務める野茂英雄さん、朴賛浩(パクチャンホ)の日韓のレジェンド2人だ。90年代、まだMLBの中でアジア人の評価が高くなかった時代に道を切り開いた2人は、僕らには想像できない苦労を経験してきたと思う。そういう人が近くにいるだけで、安心感が違う。

 メジャー通算124勝をマークした朴賛浩は、01年までドジャースに在籍しており、02年に入団した僕とはちょうど入れ違いだった。そんな彼と牧田について話した時、こんなメッセージを託された。「牧田は既に救援のポジションを与えられている。だから最初から実力を見せようとする必要はない。焦らず、自分の調整に専念するように伝えてくれ」と――。

 僕もメジャー1年目のキャンプで、当時エースのケビン・ブラウンに「おまえの実力は分かっているから、結果は気にするな」と声をかけてもらい、気持ちが楽になった。特に牧田の場合、遅い球を投げるのは勇気がいること。結果を意識すると、なかなか遅い球で勝負できないが、ポジションが確約されているとなれば、この時期はいろいろ試すことができる。スローカーブが使えれば、ホップするような高めの直球とのコンビネーションは大きな武器になる。

 今や日本でトップレベルの投手は、メジャーリーガーからも一定の評価を集め、リスペクトされている。そう認めさせたのも、野茂さんや同じアジア出身の朴賛浩の功績が大きかったと思う。

 今回はエンゼルスの大谷、ドジャースの前田、パドレスの牧田を取材してきた。ちなみに、アリゾナ・キャンプは「カクタス(サボテン)リーグ」と呼ばれるが、サボテンは何百年も生きるらしい。関係ないか…。 (本紙評論家)

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2018年2月28日のニュース