広島・薮田×大野豊氏対談 コイ背負って立つ「3連覇の中心にいたい」

[ 2018年2月16日 11:25 ]

本紙評論家・大野豊氏(奥)との対談で、シュートの握りを披露する薮田
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 広島の薮田和樹投手(25)は15日、本紙評論家・大野豊氏との対談で、チームトップの投球回数を投げ抜くことで、コイの投手陣を背負って立つ覚悟を示した。大野氏は、個性的な投球フォームを貫いて結果を残した姿勢を評価。勝率第1位となり初のタイトルを獲得した昨季からの、さらなる活躍に期待した。

◇  ◇  ◇

 大野 プロ4年目のキャンプ。第3クールを終えて、今の段階の体、投球の状態はどう?

 薮田 去年の春が、それまでで一番調子がよかったのですが、それと同じぐらいの状態なので、今年はいいスタートが切れたと思います。

 大野 大学時代も故障の経験もあったりして、去年のあたりから肩の心配が解消されたように感じるけど、体のケアに関しては意識している部分はあるの?

 薮田 胸回りの硬さをとにかく出さないようにしています。

 大野 おお。なるほど。

 薮田 これまでは胸のあたりが硬かったので、どうしても肩だけで投げてしまって。胸もそれるようになって、肩の負担を減らすことができたのかなと思います。

 大野 それは自分で考えたの?

 薮田 カープのトレーナーの方に指摘されました。3軍のころにほぼ付きっきりで指導していただきました。

 大野 その成果は感じる?

 薮田 今は肩の不安は全くありません。

 大野 薮田の場合は独特の投げ方で。テイクバックが体に近いところを通って投げる。それが、肩の故障の原因と言われたことがあるんじゃない?

 薮田 はい。あります。

 大野 でも、それを変えずに今もしっかりと投げられている。

 薮田 テイクバックをもう少し遠回りさせたりということも試したりしたのですが、そうすると肩に痛みが出たりしました。痛くない投げ方を学生時代に考えてたどり着いたフォームなので。自分に負担が少ないのかなと思って。今のところ痛みも出ないので、この投げ方を継続していこうかなと思っています。

 大野 この投げ方で成績を残したのだから、今は誰も文句を言う人もいないでしょ?

 薮田 そうですね(笑い)

 大野 薮田の投げ方はひとつの自分の個性。俺も個性のある、テイクバックがお尻のうしろに入るような投げ方だった。薮田も個性を変えずして、自分の力を出せる状況をつくれたというのは非常に大きいと思う。そういうこだわりというか、頑固さというか。それで結果を残したのだから。それで去年はね、とりあえず、おめでとう(笑い)。勝率1位だからね。

 薮田 ありがとうございます。

 大野 シーズンの最初はリリーフで入って3勝したよね。中継ぎとして始まったということに関しては、どういう気持ちだった?

 薮田 開幕1軍も初めてだったので。まずは、自分のポジションを確立させようというのが一番でした。1年間1軍でプレーするということを目標にして、中継ぎをやるのであれば勝ちパターンに入りたいと考えていました。

 大野 それから交流戦で先発を任されて。そのときの心境は?

 薮田 最初は調整が難しかったので、ブルペンに入れてもらって、中継ぎ待機をしながら初先発を迎える形になりました。

 大野 そこから大ブレーク。先発ローテもしっかり守って。内容を振り返って、これでプロでやっていけるなというような自信はどの時点でつかめた?

 薮田 今でも、これでやっていけるという自信はまだないです。

 大野 そうなんだ。

 薮田 去年はうまく行きすぎて、逆に怖いなという思いもあったので。

 大野 ただ、去年成績を残せた中で、精神面なのか技術面なのか、何か変化はあったんじゃないの?

 薮田 技術で一番変わったのはカットボールをうまく使えるようになったこと。これまではツーシームには自信があったけど、それがダメな日は真っすぐしかないという状態だったので。カットボールを覚えてからは、ツーシームがダメな日でも、直球とカットボールで組み立てることができました。それが一番大きかったと思います。

 大野 確かにツーシームもカットボールも使えるようになった。それ以外にも、薮田が投げている姿を見たら、自信を持って打者に勝負できるように見えるんだけど。気持ちの部分の変化はもあったのかな? それは自分の中で感じてはいなかった?

 薮田 そうですね。あまり感じてはいません。

 大野 俺から見たら、精神的な部分ですごい成長したなと思ったんだけど。

 薮田 カープは打線がいいので。最低限クオリティスタートをしようとは考えていました。それさえすれば、勝ちがついてくると感じたので。

 大野 ピンチでも落ち着いて粘り強く、自分の投球をすればいいんだというふうに見えた。

 薮田 大野さんがおっしゃったように、諦めずに最少失点で切り抜けていけば、打線が追いついてくれたり、逆転してくれるというような考えはありました。

 大野 その中で15勝3敗。タイトルホルダーだからね。これはすごいことだと思うよ。今年は何か新たに取り組んでいることはあるの?

 薮田 球種でいえばフォークとシュートを投げています。フォークは元々投げていたのですが、ツーシームの落差がついてきて、あまり使うことがなくて。ツーシームがダメで落ちる球がないときに代用できるボールとして取り組んでいます。シュートは、直球とツーシームの間のボールになるので。右打者も踏み込みにくくなるボールをつくりたいと思ったので。

 大野 キャンプでの新球の手応えはどう?

 薮田 フォークはいい感じかなと思うのですが、シュートは日によったりですね。

 大野 新球に取り組むことで、他の球種にも悪影響が出る怖さはない?

 薮田 シュートは一番難しくて。シュートを投げることで、他の球種とのバランスが崩れたりしているので。そこを立て直しながらやっています。去年と同じ投球ができれば数字もついてくると思うので。そのためには今持っている球種の精度もあげないといけないですし。去年の投球ができなくなったときにどう立て直すかを考えたときに新しいものが必要だと思いました。

 大野 色々考えてるね。いいことだよ。悩むだけではなくて、ちゃんと考えているね。シュートは俺も使っていたけど、曲げたいということで、腕を逆にひねっていくイメージがあるでしょ。体が開いてしまう危険がある。直球と同じような形で入っていってリリースのところでひねるイメージ。そうしたらバランスが崩れるのは防げると思う。そんなに数多く投げるボールではないからね。でも、それがあるというだけで打者は違うはずだから。新しいものがあると打者も打ちにくい状況に持って行けるから。そういう意味では新しいボールを覚えることは大事だと思うし。でも、薮田が言ったように、真っすぐ、ツーシーム、カットボールの精度を上げることがまず大事だからね。そこから新しいボールがついてくるイメージが必要だと思うよ。

 薮田 はい。直球は順調に仕上がっていると思います。

 大野 それが一番。新球に取り組めているのは、これまでと違って、ある程度立場が確立できた状況が関係あるのかな?

 薮田 いや、それは関係ないです。去年は黒田さんが抜けて、先発の枠が2つも空いていた中でつかみきれなかった。今年はまずそこを確実につかみにいくという目的でこのキャンプに入っています。

 大野 薮田にとって、黒田というのはいい教材として、影響があるのではないかな?

 薮田 はい。本当に投手の鏡のような人だと思うので。

 大野 黒田の投球を見て学んで、投球に生かすという投手は本当に増えた。薮田もそのうちのひとりだと思う。もちろん薮田の能力もあるけど、そういう人がいたということもより一層能力が生かされていると思う。本当に素晴らしいですよ、この成長は。ところで、今年はもう一回活躍できるぞという自信に満ちているのか、本当に大丈夫なのかなという怖さのほうが大きいのか、今はどういった心境?

 薮田 去年は本当にうまく行きすぎたシーズンだったので、シーズンが終わった段階では来年が怖いなと思っていたのですが、今年に入ってからはどれだけできるか早く試合がしたいという気持ちが強いですね。

 大野 不安と期待というのがキャンプに入る前は誰にでもある。その不安の部分はキャンプで解消していけばいい。いい形で肩を作って、大きく期待の方にしていけばいいと思うよ。とにかく、今年はさらに成長した薮田の投球が見られるということかな。

 薮田 はい。がんばります。

 大野 ハハハッ(笑い)。今年は監督の期待はあるだろうしね。去年も素晴らしい数字だけど、今年は最初から先発ローテに入ることになる。具体的な数字の目標はあるかな?

 薮田 一番は規定投球回ですね。今年も中継ぎ全員に50試合以上投げさせてしまう状態だと、いつ崩れてしまうか分からない。まずは自分自身が長いイニングを投げていきたい。数字でいえば170イニング以上は投げたい。

 大野 そこは180とは言わないんだ(笑い)

 薮田 去年の1試合平均平均が6・5イニングぐらいだったので、そこが7イニングになれば25試合で170イニングぐらいになるということで。

 大野 完投の意識はあまりない?

 薮田 いえ。もちろんあります。

 大野 緒方監督の思いとして、180イニングぐらい投げて、勝ち負けも大事だけど、まずは試合をつくってほしいという思いが強い。やっぱり薮田自身もそういう思いはある?

 薮田 去年の(野村)祐輔さんみたいにカード頭で回っても安定した数字を残せるというのが、チームの柱になる投手の姿だと思うので、今年はそこを目指していきたいと思います。

 大野 去年の祐輔を目指したらダメだよ(笑い)。去年は150イニングぐらいしか投げてないからね。どちらにしても、祐輔よりもチームの誰よりも多いイニングを投げられる投手を目指してほしい。去年の体の疲れは大丈夫?

 薮田 ないです。

 大野 ということは、順調に来ているということだね。結婚もしたしね。新婚生活はどう?

 薮田 楽しいです(笑い)

 大野 ハハハッ(笑い)。支える人もできたということだしね。ローテを1年間しっかりと守ってほしいということと、そのためにキャンプをいい形で過ごしてほしい。力強い投球を期待してます。

 薮田 はい。ありがとうございます。3連覇の中心にいたいですし、誰よりもイニングを投げて、最後まで守り抜くということを意識したいと思います。

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