柳田は別格 日本球界にメジャー流の「フライボール革命」は浸透するのか

[ 2018年2月15日 11:05 ]

フリー打撃で快音を響かせる柳田
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 今季の日本球界で注目していることがある。メジャーで流行している「フライボール革命」がどこまで浸透するかだ。各球団で導入されている高性能弾道測定器「トラックマン」によるデータを元に、あるスコアラーは「確かに25〜35度の打球角度がヒットになる確率が最も高い。今年、どこまでフライボールを打とうとする打者が増えてくるか、注目している」と語る。

 アッパー気味のスイングで打球に角度をつけ、ヒットになる確率を上げる。それに取り組み、昨季世界一になったのがアストロズだった。昨季のメジャー総本塁打数は史上最多の6105本を記録。メジャーでは各打者の打球方向のデータに基づいて年々、内野守備のシフトが極端になり、ゴロで内野手の間を抜くことは難しくなっている。メジャーリーガーは圧倒的なパワーがあるだけに、角度をつけた打球の方がヒットになる確率が上がるのも、理解できる。

 しかし、日本ならどうか。パワーヒッターはごく一部。非力な選手が打球を上げようとすれば、球威に負けてポップフライになるだけである。打球角度があっても、打球速度が伴わなければ意味を持たない。前出のスコアラーは「メジャーの選手は誰もがスタンドまで運べるパワーを持っているから、フライボール革命は理にかなっている。しかし、日本の選手でそれをできるのは、1軍クラスで3割いるかどうか」と分析する。しかも、日本の球団にはメジャーのように極端な守備隊形を敷くチームもない。ゴロを打ったほうがヒットになる確率の高い選手は多いと思う。

 もちろん、ソフトバンクの柳田は別格だ。メジャー級のパワーにスイングスピード。先日、ソフトバンクの宮崎キャンプを訪問した野村克也氏から「アッパースイング。あんな打ち方で結果を残されては困る。昔はみんな王や長嶋のレベルスイングを真似したが、あれば真似できない」と言われていた。柳田のような打ち方を真似する選手が増えることを危惧している。

 ただ、柳田の打ち方は独特ではあるが、一概にアッパースイングで打っているとは言えない。バットを上から振り下ろし、フォロースルーで大きく振り上げる。ダウンからアッパー。「V字スイング」で強烈なバックスピンをかけて、打球を上げている。強力打線の西武にも打球に角度をつける打者は多い。希代のアーチストの中村はもちろん、昨季ブレークした山川。長距離砲だけではなく、安打製造機の秋山もそうだ。レベルスイングからボールの下を叩き、昨季は自己最多の25本塁打を記録。その上で打率も残し、自身初の首位打者に輝いている。

 最近では、楽天のオコエが「昨年は(打球角度が)30度いかないことが多かった。今年は35度を目指したい」とフライボール革命に影響を受けている。選手それぞれ合ったスイングがあるだろうし、オコエの飛躍のきっかけになることを期待する。(野球コラム・飯塚 荒太)

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2018年2月15日のニュース