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目標を口に出す姿勢――「優勝」宣言相次ぐ阪神

1月5日の年賀式で新年のあいさつをする阪神・揚塩球団社長
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 【内田雅也の広角追球】新年を迎え、鳥谷敬も福留孝介も糸井嘉男も口をそろえて「目標は優勝しかない」と話している。監督・金本知憲が「チームを引っ張っていってほしい」と指名するベテラントリオがはっきり「優勝」と言うのだから中堅や若手も追随する。たとえば秋山拓巳は「金本監督を胴上げする」と宣言した。

 今年の阪神には、選手たち誰もが「優勝」を口にしている。これはどうしたことだろう。

 年頭1月5日の球団年賀式で球団社長・揚塩健治が語った年頭所感として選手たちに求めたのが「有言実行」だった。

 「優勝する、日本一になる、と言葉に出してほしい」と語った。

 「言葉に出せば、言葉に違わない中身のある、工夫のある練習を継続しなければなりません。レギュラー争いは厳しいですが、向き合う相手は自分自身だと思っています。優勝の2文字を声に出し、自分に打ち勝ってほしい。その努力の継続がチームの勝利へとつながると信じています」

 揚塩には、金本体制3年目で機は熟したとの判断があった。新外国人大砲ウィリン・ロサリオの獲得を本社の本気度の表れとした上での言葉だった。

 「戦える基礎的な力がチームに備わってきたと私は見ています。そして、懸案の外国人大砲を獲得出来ました。オーナーはじめ電鉄本社もそれ相応の投資に理解を示し、大きく期待をする補強に踏み切ったということです。外国人一人で優勝できるという甘いものではないことは承知しています。ただ“今年はホントにいくぞ”“絶対優勝するぞ”という本社・球団挙げての意気込みを選手自身も感じてください」

 よく「おとなしい」と言われる今の阪神の選手たちに奮起をうながしたのだ。この所感を語った年賀式は球団役職員相手のもので、目の前に選手たちはいなかった。もちろん報道で知ったはずだが、2月のキャンプに入れば、選手やコーチに直接語りかけるつもりでいる。昨年12月1日付での就任後、金本やヘッドコーチ・片岡篤史と会食した際、優勝と口にする意図を説明し、同意も得ている。

 揚塩が優勝宣言を要求した理由には星野仙一の姿勢があったそうだ。「星野さんが行ってきたことの影響がありました。見たり聞いたりして私が学んだのです」

 星野が阪神監督だった2002―03年、キャンプの練習中、ヘッドコーチ・島野育夫がマイクで「優勝や!」「優勝するぞ!」と叫んでいた。そんな光景をテレビや新聞で見聞きしていた。

 星野の著書『改訂版 星野流』(世界文化社)によると、スローガンに掲げた「ネバー・ネバー・ネバー・サレンダー」(絶対、絶対、絶対あきらめない)に加えた<もうひとつの“呪文”>だったそうだ。

 <まず「優勝」という言葉を普段いつも口にできるような雰囲気にしよう>。監督はじめコーチ、選手やフロント、裏方まで「優勝するぞ」と<あいさつ代わり、口癖のように>繰り返す。

 そのうち<自分たちのレベルや力がちゃんとわかってくる。足りないところや工夫や努力をしないといけないところが自然と見えてくる>。<自覚が課題を作り、課題に取り組む気持ちが「優勝」という目標を半信半疑でもだんだん意識していくようになる>。星野が発する「勝ちたいんや!」は流行語にもなった。

 思えば、「有言実行」という言葉を初めて目にしたのは中学1年、1975年ごろだった。人気野球漫画『ドカベン』の主人公、山田太郎は不言実行タイプだと作中で語られていた。ある日、同級の岩鬼正美が「わしは有言実行や!」と叫んだシーンを覚えている。

 山田のように、文句や理屈を言わず、黙って実行するのが日本人の美徳とされてきた。だが、国際化が進み、何も言わないようでは外国人に理解されない。自身の発言に責任を持って実行する岩鬼タイプが必要とされてきた。当時、辞書になかった「有言実行」もその後、新語として掲載され認知されてきた。

 プロ野球の世界では落合博満が思い出される。史上最多3度の三冠王を獲得した強打者が著書『采配』(ダイヤモンド社)で説いている。<私が現役時代に毎シーズン「三冠王を獲ります」と宣言していたのも、打撃タイトルを三つとも独占しようと取り組んで初めて、ひとつ、ふたつと手にできるということを、身をもって感じていたからである>。

 時代はさらに進み、ネット社会のいま、大言壮語は、ともすれば非難の対象となる。それでもあえて「優勝する」と宣言した上で挑んでいく姿勢をたたえたい。

 星野が永眠したのは4日だった。ただ、揚塩が訓示した5日の時点ではまだ、悲報は明らかになっていなかった。あれは「野球に恋した人生」を全うした星野が猛虎復活を託した遺言だったのだろう。 =敬称略= (編集委員)

 ◆内田 雅也(うちた・まさや) 1963年2月、和歌山市生まれ。桐蔭高―慶大卒。野球部だった高校時代、夏の大会前に新聞社支局から届くアンケートに「好きな言葉」があり「夢」「夢を夢とするなかれ」と書いていた。プロ野球名鑑で見た星野仙一投手(中日)の座右の銘。投手として憧れの存在だった。

[ 2018年1月14日 11:15 ]

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