【決断】巨人・松本哲 3軍コーチで“第2の松本”育成へ経験伝える

[ 2017年12月5日 09:00 ]

育成選手からはい上がり、中堅手として何度もダイビングキャッチでピンチを救った松本哲
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 晴れやかな表情でマイクの前に立った。11月23日、東京ドームでの巨人ファンフェスタ。11年間の現役生活に区切りを付けた松本哲は「(1メートル68の身長は)プロ野球選手としては大きくない体。ファンの皆さんがこの体を後押ししてくれて、いいプレーをすることができた」と感謝の言葉を並べた。

 今季は2月の春季キャンプから一度も1軍に昇格することはなかった。2軍戦で99試合に出場し打率・288をマークしたが、9月に入り自らの引き際を考えだした。「まだできるという思いもあったが、1軍に上がれなかったので。それが一番大きかった」。10月3日に1軍の今季最終戦が終わると、高橋監督に電話を入れた。引退の報告をすると「本当にお疲れさま」とねぎらいの言葉を掛けてもらった。

 育成選手からはい上がり、09年には新人王。チームの日本一にも貢献した。「最初から支配下だったら鼻が高くなっていたかもしれない。育成選手だったから自分が一番へたくそだと思ってはい上がってやるという気持ちが芽生えた」と振り返る。中堅手としてピンチを救うダイビングキャッチ、てんびん打法から広角に打ち分けるしぶとい打撃はファンの心を打った。

 球団からは3軍コーチの打診を受けた。「そういう話をいただけるとは思っていなかった。光栄だったけど、自分が教えることができるかなと」。迷いはあったが、3軍には自身がプロのスタートを切ったときと同じ、育成選手がいる。「自分が経験したことを少しでも伝えられたらと思った」と引き受ける決断をした。

 11月1日、ジャイアンツ球場での秋季練習初日。入団時に背負った「105」番のユニホームを着て、指導者としてのスタートを切った。「育成選手が支配下に上がることはもちろん、1軍で活躍してくれることが僕の夢。そういう選手が出てくるようにしっかりサポートしたい」と、第二の人生のやりがいを口にした。

 ファンフェスタでは家族から花束を贈られた。「奥さんにはどんなときも支えてもらって、頑張ることができた」と感謝した。5歳と3歳の娘には「今度は野球を教える先生になるんだよ」と優しく語り掛けた。 (川島 毅洋)

 ◆松本 哲也(まつもと・てつや)1984年(昭59)7月3日、山梨県生まれの33歳。山梨学院大付(現山梨学院)1年夏に甲子園出場。専大を経て06年育成ドラフト3位で巨人に入団。07年2月にセ・リーグで初めて育成選手から支配下登録された。09年に新人王、ゴールデングラブ賞。10年に球宴に出場し、第2戦で育成出身選手として初安打をマークした。1メートル68、70キロ。左投げ左打ち。

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2017年12月5日のニュース