ヤンキース・ブーン新監督 わずか半年のピンストライプ生活で味わった栄光と厳しさ

[ 2017年12月5日 09:30 ]

2003年のア・リーグ地区優勝決定シリーズ第7戦、延長11回裏、値千金のサヨナラホームランを放ったヤンキースのアーロン・ブーン(AP)
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 ヤンキースは4日、アーロン・ブーン氏(44)の新監督就任を発表した。2020年までの3年契約で21年は球団が選択権を持つ。

 ブーンといえば、03年のレッドソックスとのア・リーグ優勝決定シリーズ第7戦での、延長11回の劇的なサヨナラホームランが有名だ。あの松井秀喜氏が8回に同点生還を果たし、感情を爆発させジャンプしたあの一戦。ブーンの一振りが激闘に終止符を打ち、ワールドシリーズ進出に導いた。

 鮮烈な印象の一方で、実はピンストライプを着てプレーしたのはこの03年の後半戦だけ。レギュラーシーズンではわずか54試合。このアーチでヒーローとなった男は一転、その3カ月後に解雇の憂き目にあっていた。

 原因はブーンの不注意と言われても仕方ない。シーズンオフの1月にバスケットボールに興じている際に、左膝のじん帯を断裂してしまったのだ。シーズン絶望となる重傷。しかも契約書には「バスケットボール禁止」が明記されていたため、約6億円の年俸のうち1億足らずしかもらえず、解雇されてしまった。

 そしてこの解雇が電撃トレードにつながる。キャンプ直前に正三塁手不在というピンチに陥ったチームは、三塁コンバートを前提にレンジャーズからアレックス・ロドリゲスを獲得。しかも宿敵レッドソックスとのトレードが破談した直後の、水面下での電撃交渉だった。

 ブーンの一振りが宿敵との因縁を深め、さらに故障退団までもがライバル関係に拍車をかけることとなった。

 同じグラウンド外の故障といっても、ブルワーズ時代のザック・グリンキーはバスケットボールで肋骨を骨折したが、おとがめなし。ジャイアンツのマディソン・バムガーナーも今年4月の休日にオフロードバイクで転倒し前半戦を棒に振ったが、エースの座は揺るいでいない。

 わずか半年間のピンストライプ生活だったが、ブーンにはヤンキースの栄光も、厳しさも身をもって知ることになっただろう。4日に監督就任が正式に発表されたが、どんな発言と、どんな態度で指揮に臨むのか。

 もともとは祖父、父、兄と続き3世代メジャーリーガーの名門の出。しかもアーロン含め4人全員がオールスター出場を果たしている。さらに甥にあたる兄ブレットの息子ジェイクは今年のドラフトでナショナルズから38巡目指名された。大学進学を選んだが、4世代メジャーリーガー誕生かと騒がれた。将来的に叔父と甥の対決が実現すれば、そちらも要注目。何かと話題を呼ぶ新監督となるのは間違いない。(記者コラム・後藤 茂樹)

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