ヤクルトのライアン2世・高橋が脱ライアン

[ 2017年11月29日 10:20 ]

17年1月、足を高く上げるフォームに取り組んだヤクルト・高橋
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 11月24日。ヤクルトの2軍施設がある埼玉・戸田寮で行われた契約更改交渉。肩をすぼめ、元気なく、無表情のままに今季を振り返る青年がいた。「今年も去年と同じことを繰り返してしまった」。2年目を終えた高橋奎二投手(20)だった。

 淡々とした口ぶりから無念さが伝わった。1年目の昨季は左肩痛でシーズンを棒に振った。そして「去年のようにはならないようにしたい」と臨んだ今季。慢性的な腰痛と、再びの左肩痛に苦しんだ。キャッチボールもできなかった日々。「また振り出しです」。シーズン途中、リハビリに励む左腕に話しかけると無表情のまま答えた。契約更改後と同じだった。

 普段は屈託のない笑顔で取材に応じる20歳の若者。飾り気もなく、プライベートの雑談にも気軽に応じる。だからこそ、表情が消えているときの印象が強烈に残った。龍谷大平安からドラフト3位で入団したのが15年。将来の先発ローテーション候補として首脳陣の期待は大きいが、未だに2軍での登板もままならない状態が続いている。

 そんな左腕が先日、大きな決断を下した。投球フォームの改造である。右足を肩のラインまで上げる動作は、チームのエース・小川にそっくり。その右腕をもじり「ライアン2世」と称された。だが、右足を上げれば「体が反る形になり、腰に負担がかかってしまう」。一年間悩まされ続けた腰痛を緩和するために、避けられなかった。

 肩のラインまで上げていた右足を「胸あたりまで下げた」という。「自分自身、フォームを変えたくはなかったが、このままではどうすることもできなかった」。自らの代名詞、特徴を消す。簡単な覚悟ではなかった。今後について問うと「腰が良くなったら、もう一度、挑戦したいとも思う」と悔しさもにじませた。

 2年目の今季、ルーキーの寺島、梅野が高橋の先を越えて1軍デビューを飾った。未来のエース候補・寺島はエースナンバーの「18」を背負う。首脳陣の評価が上昇中の梅野も来季、1軍の戦力としても十分に期待されている。「悔しいです。プロは1軍で投げないとですし、先に後輩に越されたわけですし」。高橋も対抗心を隠さない。

 怪我をしては土俵にすら立てない。成長曲線も描けない。来季で3年目。若手の台頭はチームに活気をもたらす。小川新体制で再出発する18年。勝負に勝ち、1軍であの笑みをみせてほしい。(記者コラム・川手 達矢)

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2017年11月29日のニュース