日本球界“リクエスト”導入で進化するスライディング技術

[ 2017年11月24日 09:00 ]

本塁に突入し、捕手のタッチをかわし生還したイチロー(AP)
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 日本球界で来季から「リクエスト」を導入することが決まった。審判の判定に対し、映像を見直す「リプレー検証」を要求できる新ルールだ。

 メジャーでは「チャレンジ」として定着し、勝敗を分けることも多い。今季のナショナルズ―カブスのナ・リーグ地区シリーズ第5戦。勝った方がリーグ優勝決定シリーズに進出する大一番で、ナショナルズの一塁走者が捕手からのけん制に対し足から滑り込んで帰塁した。余裕のタイミングで、判定もセーフだったが、カブスの知将ジョー・マドン監督は「チャレンジ」を要求し、判定が覆った。スローで見ると、確かに滑り込んだ足が勢い余って一瞬ベースから離れ、そこにタッチされている。ナ軍は好機をつぶして敗退となり、そのスロー映像はネット上でも話題となった。

 ひと昔前は当たり前だった捕手のブロックが「コリジョン・ルール」でなくなったように、ルールが技術を変える。大リーグの試合を見ていると、日本でほとんどないプレーをよく目にする。ヘッドスライディングをしながら、相手のタッチをよける動きだ。前述のように、「チャレンジ」の導入で足からの滑り込みでアウトになる可能性が上がったこともあり、頭から滑る選手が多い。完全にアウトのタイミングでも、滑りながら瞬時に手を引っ込めたり、体をひねってタッチを交わそうとする。「チャレンジ」でセーフになることも少なくない。足で滑っている途中に足を引っ込めてグラブをよけることはできないだろう。「リクエスト」が導入されれば、タッチをかわす「神ヘッドスライディング」を日本で見る機会も増えるかもしれない。

 セーフになる可能性にかけるなら、頭から滑り込む方がいいのかもしれない。スライディング技術も洗練されていくだろう。ただし、ケガのリスクは高まる。今季も現役最強打者の一人、エンゼルスのトラウトがヘッドスライディングで左手親指を骨折した。トラウトは復帰後も果敢に頭からダイブし続けたが、少年野球を含む指導者には、危険な技術を押しつけない姿勢が求められると思う。(記者コラム・渡辺 剛太)

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2017年11月24日のニュース