【石井一久 クロスファイア】若き日本の投手力 東京五輪につながる

[ 2017年11月22日 11:30 ]

台湾戦で好投した今永
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 侍ジャパンが初代王者となったアジアプロ野球チャンピオンシップ。24歳以下、または入団3年目以内というカテゴリーの大会だが、日本、韓国、台湾の若い世代の野球を見ると、それぞれの国内リーグの特徴がよく見えてくる。僕が気になったのは、台湾だ。

 2年連続で打率4割を記録した王柏融(ワン・ボーロン)をはじめ、強力打線が注目されていたが、日本戦では今永の前に6回まで12三振を喫した。台湾はメジャーの影響が強く、パワー全盛の野球。どの選手もスイングは力強く、9回に5番の朱育賢(シュウ・ユィシェン)が逆方向の左中間席に叩き込んだ本塁打は見事だった。今永は確かに良かった。ただ、あそこまで完璧に抑えられてしまうと、それは国内リーグのレベルの差と捉えられても仕方ない。

 台湾の国内リーグは「超打高投低」。才能あるアマチュアの投手は、国内プロ野球を経ずに大リーグの球団とマイナー契約を交わしてしまうために、どのチームも先発ローテーションは外国人投手が中心だ。特に優秀な左投手は少なく、今季の成績を調べたら、5勝以上している左の先発投手は1人(9勝)しかいなかった。だから、今永の直球や変化球の切れは日頃、体感したことがないレベルだったのだろう。

 僕の考えでは、いい投手が多いと、打者全体のレベルも自然と上がっていく。それは日本を見ても分かる。セ・リーグとパ・リーグで、各球団のエースの実力は大差ないかもしれないが、先発3〜5番手を比べた場合、層の厚さや平均値ではパの方が上。だから、パの打者の方が力負けしないスイングをする選手が多い。ただ速い球を打つだけなら、バッティングマシンで打ち込めばいいし、今はデータも充実しているので、ある程度までレベルは上げられる。でも、実際に生身の体で投げる直球や変化球の質や切れは、機械とは違う。そういうところが、国際大会では、大きな「差」になって顕著に表れる。

 「打高投低」の野球は確かに華やかだ。しかし、やっぱり大事なのはバランスで、日本の若い世代の投手のレベルが高いというのは頼もしい。それが相乗効果となって打撃のレベルも上げ、20年東京五輪へもつながっていくのではないか。(スポニチ本紙評論家)

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2017年11月22日のニュース