日体大37年ぶり日本一の影の立役者 指揮官「彼がいなければ優勝できなかった」

[ 2017年11月20日 09:30 ]

明治神宮大会で優勝し、歓喜の日体大ナイン
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 明治神宮野球大会・大学の部で日体大が37年ぶりの優勝を果たした。帝京大ラグビー部流の強化策など地道な改革に取り組み続けた末の全国制覇。そこには影の立役者がいた。

 今大会は記録員としてベンチ入りした前川紀洋学生コーチだ。名門・徳島商で1年夏に甲子園に出場した実績を誇り、主将も務めた。日体大進学後も外野手としてプレーし「大学でもキャプテンになりたいと思っていた」。新チームでも当然、主将候補だったが、古城隆利監督から「日本一になるために、お前にグランドマネジャーをやってほしい」と打診された。努力家で明るく、まじめな性格を見込み指揮官たっての頼みだった。

 渉外役としてのマネジャーではなく、チーム全体を見渡していく役割だ。しかしそれはプレーヤーを断念するということでもある。選手として4年間を全うするつもりだっただけに、衝撃の通達だった。「気持ちの整理ができなくて、両親にも電話してめちゃくちゃ泣きました。正直、監督はなんでそんなこと言うんだろう腹も立った」。だが「監督が、チームが日本一になるための優先順位として必要だと言っている。この仲間と日本一になりたいし、やるからには日本一になろう」と気持ちを切り替えた。葛藤の末に引き受け、監督と選手の橋渡し役や練習メニューの設定など動き回った。

 古城監督も優勝後の会見で「前川が本当によくやってくれた。主将にもなれるくらいの器だったけれど、マネジャーを引き受けてくれた。彼がいなければ優勝できなかった」とねぎらった。ブレザー姿で歓喜の瞬間を迎えた前川も「こんなふうになるとは思いもしなかった。本当にうれしいです」と笑顔。1年前の涙が報われた全国制覇だった。

 日体大は今年フル回転した3年生の松本、東妻の2枚看板が来年も残るだけに春秋リーグ戦、全日本大学選手権、明治神宮大会の大学4冠も夢ではない。前川の存在が日体大黄金時代の始まりを作ったと言っても、過言ではないだろう。(記者コラム・松井 いつき)

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2017年11月20日のニュース