聖光学院 新チームなのに「集大成」のワケ…秋に得た大きな経験

[ 2017年11月18日 11:30 ]

12日の明治神宮大会・創成館戦に先発した衞藤
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 14日に幕を閉じた明治神宮野球大会高校の部に、東北代表として聖光学院が初出場した。9月末までの3年間、福島支局時代に同校に密着してきた記者にとっても、感慨深いものがあった。

 12日の初戦は創成館(長崎)に4―6で競り負け。守備から崩れた「らしくない」敗戦だったが、そこまでの道のりには見るべきものが多かった。夏の甲子園は戦後最長11年連続出場を更新中だが、意外にも神宮は初出場。例年にはなかった2つの要素がチームを加速させた。

 1つは重傷者の復活。右腕・衞藤は7月に右肘の手術を受けたが、斎藤智也監督が「奇跡」と驚く回復力で県大会に間に合い、1回戦で2安打完封。初陣の緊張感から、打線が停滞したチームを救った。東北大会では全試合先発登板と大車輪の活躍。横山博英部長は「ピンチの度に“肘で苦しんだことに比べたら、大したことねえだろ”と(伝令に)伝えさせてた」と気持ちを奮い立たせ、衞藤もそれに応えた。

 打線では須田。昨秋は1年生ながら4番を務めた右の大砲は、昨冬以降3度の右肘手術に加え、7月に左膝前十字じん帯を痛めた。万全ではない中「野球が出来ることを楽しみに変えて、大胆にいこう」と打線をけん引。そして東北大会決勝、4―4の8回。左翼スタンドにアーチを架け、これが決勝点となった。

 2つ目が「集大成」。主将の矢吹は「秋を集大成として臨んできた」と明かす。新チームなのに集大成。聖光学院では主力組のAチームの下に、次代を担う1・2年生主体のBチームがある。横山部長が率い、Aチームとは別行動で秋以降の土台をつくる。近年は秋の公式戦もそのまま同部長主導で戦う。「このチームで神宮を獲れなかったらもう無理だ」と早い段階でハッパを掛けるほど、例年以上に可能性を感じていた代。選手たちも意気に感じ「部長が指揮を執る最後の大会だ」と結束を強めた。初めて秋の東北を制し横山部長はベンチ前で号泣。「自分の野球人生のハイライト」としみじみ振り返った。

 神宮まで到達した経験が、春と夏に向けて例年にない強みになりそうだ。斎藤監督は「神宮と甲子園は全然違う。でも、勉強になった」と意識を聖地に向ける。これまで幾度となく跳ね返されている、甲子園8強の壁の打破。そして悲願の日本一へ。気が早い話なのは承知の上。それでも来年こそはと、密かに期待を寄せてしまう。(池田 翔太郎)

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2017年11月18日のニュース