大谷の早期メジャー活躍で証明される日本ハムの「育成力」 そして清宮も… 

[ 2017年11月14日 10:24 ]

大谷(左)と清宮
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 11月11日午前11時から日本ハム・大谷がメジャー挑戦を表明した会見を、栗山監督はこっそりと別室で聞いていたという。「監督と選手」という関係だが、その心は旅立つ息子を送り出す父親の気持ちと同じだろう。

 高校卒業して「メジャーに行く」という若者の夢を覆させ、二刀流という無謀にも思えた挑戦を提案。まだ未熟で細かった体に大きな負担を掛けるからこそ、指揮官は「故障させないこと」を自分自身にルールとして課した。

 昨年の大谷は何度もマウンドで足をつった。「俺がどれだけ心臓が止まりそうになったか」。ベンチの栗山監督はそのたびに生きた心地がしなかったという。右手の中指と人さし指には、マメをつくってはつぶす繰り返しだった。今季は左太腿肉離れがあったが、振り返ってみれば、5年間で肩、肘に大きな故障は一度もなかった。これが「大谷二刀流」が成功した最大の要因だ。

 球団としては、どのタイミングで大谷にポスティングを認めるかを入団当初から考えていたと思う。異論もあるだろうが、大谷の二刀流は日本球界の枠を超えるレベルになったし、「チームを優勝させる」という条件も昨年の日本一でクリアした。1年でも早く大谷をメジャーで活躍させることが、球団の「育成力」を証明することにもなる。

 ある球界関係者が言っていた。「選手は入れ替わっていかないと駄目なんだ」。球界を代表するスタープレーヤーを抱えていれば、チームは強い。ただ、それだけで球場が連日満員になるわけではない。野茂が「トルネード旋風」を巻き起こし、イチローは「振り子打法」で球界に革命を起こしたが、彼らがメジャー移籍するまでスタンドがいつもにぎわっていただろうか。「投打の二刀流」で衝撃を与えた大谷だって、そのフィーバーぶりはいずれ落ち着くことになる。

 ただ、日本で最大のスーパースターとなった大谷がメジャーでも「二刀流」で活躍すれば、新たな刺激を得た米球界は、大フィーバーとなる。野球記者としては「国内の野球人気は大丈夫だろうか」と若干心配だが、新たなスターが生まれるチャンスだ。

 偶然にも、そんな年に早実・清宮が日本ハムに入団する。来春のキャンプは中田、斎藤、大谷がルーキーだった頃のように大騒ぎとなるだろう。大谷が米国に衝撃を与え、日本ハムも「清宮フィーバー」で盛り上がる。これで野球に興味を持つ子どもたちが増え、球界全体の観客動員も増える。こうなれば、ちょっと早めのポスティング申請も大成功といえるはずだ。(記者コラム・横市 勇)

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2017年11月14日のニュース