【日本シリーズ回想】マー160球翌日連投Sで日本一 「志願」とだまされた星野監督

[ 2017年10月27日 11:00 ]

13年11月、球団創設9年目で初の日本一に輝き、星野監督(左)と握手を交わす田中
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 【あの秋〜日本シリーズ回想〜(4)】59以来40年ぶりの日本一連覇を目指す巨人に、球団創設9年目で悲願のリーグ優勝を果たした楽天。開幕前日の監督会議で全試合を予告先発とすることが決まった。予告先発は監督会議の申し合わせ事項。席上、やんわり切り出した星野仙一に、原辰徳は間髪入れず「異論はありません」と応じた。

 内海哲也、杉内俊哉に菅野智之、デニス・ホールトン。左右4枚の先発陣を要する巨人に対して楽天は田中将大、則本昂大、美馬学の右3枚。予告先発が楽天に有利なことは明らかだったが、星野は別の手応えも感じていた。「相手は上から目線。全体的にそういう雰囲気だった。つけ込む余地があると思った」

 運命の第7戦。公式戦24勝無敗の田中将大で第6戦を落とした楽天は、美馬―則本の継投で3点リードして最終回を迎えた。ここで星野は前日160球を投げた田中を投入。耳をつんざく大歓声の中、田中は15球で国内最後の登板を締めくくり、星野は宙に舞った。今や語り草となったまさかの連投。これには後日談がある。

 昨夏。「神様に選ばれた試合」(テレビ朝日)を見た星野は、ニューヨークから届いた田中の言葉に驚いた。「あの時、僕は投げさせてください、と言っていません」

 試合前のコーチミーティング。星野は投手コーチの佐藤義則から「田中が投げます、と言っています」と伝えられた。半信半疑だった。7回裏、今度はブルペン担当コーチの森山良二が同じことをささやいた。てっきり志願と思い込んでいた星野は苦笑する。

 「要するにあの2人が監督の俺をだましたんだ。グルになって。まぁ、問い詰めてはいないけどな」

 2011年3月11日、東北地方を襲った東日本大震災。オープン戦転戦で1カ月近く仙台に戻らなかったチームに、さまざまな方面から批判が上がった。「帰れなかった。帰るすべがなかった。つらかった…」。田中をマウンドに送り出した星野がゲーム終了を待たず涙したのは、この時の苦しい思いが脳裏を駆け巡ったからだった。

 「神戸(阪神大震災)も大変だったけど、被災された方々の後押しというか、不思議な力が働くんだね」。しみじみと語る星野である。 =敬称略= (宮内正英編集主幹)

 ◆2013年日本シリーズ 第1戦は巨人が2―0で制したが、第2戦は楽天・田中が1失点完投と2―1で勝利。楽天が王手をかけた第6戦は巨人が田中を攻略。田中は12安打を浴び9回を160球、4失点でシーズン初黒星を喫した。3勝3敗で迎えた第7戦は、巨人・杉内がわずか1回2/3KO。楽天は美馬―則本の継投で無失点に抑えると、9回には田中が登板。打者5人を1安打に抑え、球団創設9年目で悲願の日本一を遂げた。

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2017年10月27日のニュース