5万4479人の観衆が目撃した劇的アーチ やがては将来のメジャーリーガーが…

[ 2017年10月26日 10:20 ]

ドジャース・ターナー (AP)
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 ドジャースが29年ぶりにワールドシリーズを戦っている。最後に世界一になった29年前、88年ワールドシリーズにあらためてスポットライトが当たった。今年のカブスとのリーグ優勝決定シリーズ第2戦でターナーがサヨナラ3ラン。ド軍のポストシーズンのサヨナラ弾は、88年ワールドシリーズ第1戦でカーク・ギブソンが代打逆転サヨナラ2ランを放って以来だった。ロサンゼルス近郊で生まれ育ったターナーは「一番最初の野球の思い出は、4歳の頃に祖母の家でギビー(ギブソン)のあの本塁打を見たことだよ」と語った。世界トップクラスの選手になっても、29年前のギブソンの一発を鮮明に覚えているのだろう。

 個人的な話だが、先日、母校の高校の野球部OB会に顔を出した。約70年前の公式戦初勝利メンバーだったOBの方が、マイクを持ってあいさつした。その方の知人が元巨人の大投手・沢村栄治氏の元指導者だった縁で、少年時代に晩年の沢村投手とキャッチボールをしたという思い出話をしていた。右肩を壊して投げられなかったのか、沢村さんは左手でキャッチボールをしていたらしい。「私は元々左投げなんですけど、私が左で投げているのを見て周りの人が“沢村さんが左で投げているから左で投げなきゃいけないと思ったんじゃないの?”と心配していましたよ」と笑っていた。遠慮して左で投げているのではと心配されたという話がリアルで、大投手と少年がキャッチボールする空気感が伝わってきた。

 その時代に生きて体験した人にしか「空気感」は分からない。ターナーの本塁打は本拠ドジャースタジアムで5万4479人の観衆が目撃した。一生忘れない思い出として語り継ぐだろう。その中からメジャーリーガーが誕生して、いつか劇的アーチを放ったとき、ターナーのサヨナラ弾の思い出を語ってほしい。(記者コラム・渡辺 剛太)

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2017年10月26日のニュース