ドラフト待つ「湘南のドクターK」本田、引退後も練習試合に同行する理由

[ 2017年10月19日 09:30 ]

後輩たちに交じり、地下足袋を履いてトレーニングする星槎国際湘南の本田
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 いよいよ、ドラフト会議が26日に迫ってきた。指名を待つアマ選手たちの表情にも心なしか緊張感が漂い始めている。星槎国際湘南(神奈川)の右腕・本田仁海投手もその1人だ。名門・桐蔭学園を指揮し、高橋由伸(現巨人監督)ら数多くのプロ野球選手を教え子に持つ土屋恵三郎監督の指導の下、持ち前の肩甲骨の柔らかさを生かした直球とスライダーのコンビネーションで三振の山を築き「湘南のドクターK」の異名をとった。

 高校野球引退後の本田を訪ねた。通常、寮に入っている3年生は引退後に退寮して自主練習する。しかし、本田は大学進学する同期とともに寮に残り、後輩たちの練習に参加。取材の日も学校からマイクロバスで大磯の浜に行き、地下足袋を履いて黙々と砂浜を走っていた。「週に2、3日は投球練習しています。遠投も多くやっているので夏よりも直球のキレは増した」と手応えを口にする。それだけにとどまらない。週末には練習試合に同行しているという。

 後輩たちのサポートかと思いきや、そうではない。土屋監督は言う。「練習試合の合間にマウンドを借りて本田を投げさせるんだ。お手本のようなきれいなフォームだから見ておきなさい、と選手たちに言ってね。動画を撮っている人もいたよ」。ちょっとしたショーである。本田にとって実戦感覚を忘れない練習になるのと同時に、土屋監督は別の思いも込めている。本田の投げる姿や技術を惜しみなく伝授することで高校野球界全体のレベルアップを図りたいという思いだ。「伝えていかなくちゃね。少しでも引き出しを増やしてもらえたら」。63歳の名将の粋な計らいだ。

 ドラフトで本田が指名されれば、土屋監督にとっては高校から直接プロ入りする初めての教え子となる。だからこそ「引退した後の時間の過ごし方が大事」と説く。「遊んじゃう選手が多いけれど、今しっかりやれば後にもつながってくるからね」。名将の下で育った右腕がプロでどんなふうに羽ばたくのか。今から楽しみだ。(記者コラム・松井 いつき)

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2017年10月19日のニュース