掛布2軍監督 去り際の美学貫いた「胴上げは勝者がするもの」

[ 2017年9月29日 05:30 ]

ウエスタン・リーグ   阪神16―4広島 ( 2017年9月28日    甲子園 )

<神・広>ファンに手を振って甲子園を後にする掛布2軍監督
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 今季限りで退任する阪神・掛布雅之2軍監督(62)が28日、広島とのウエスタン・リーグ最終戦に臨み、就任後最多の16得点大勝で有終の美で飾った。現役時代と同じ背番号31の“最後の勇姿”を7000人超が詰めかけた甲子園球場で披露。選手からの胴上げは辞退し、「ファンの目が選手を育ててくれた」と感謝の思いを伝えた。今後は「オーナー付アドバイザー」に就き、若虎の成長を見守っていく予定だ。

 選手交代で掛布2軍監督が一塁ベンチを出る度に歓声が沸いた。拍手が鳴った。「現役時代を思い出した。背中がぞくぞくするような、左打席に入った時のような気持ちになった」。ミスタータイガーの背番号31が復活した夢のような時間が終わった。

 「ちょっと短かったかな。でも、若い選手たちが着実に力をつけてきた。上から見て指導してはいけないと思っていた。ハードルをくぐる形で目線を下げ、同じ気持ちで同じ汗を流そうとやってきた。優しい監督だったかもしれない。非常に濃い2年間だった」

 2軍戦では異例の観衆7131人を集めた中、序盤からの猛攻で16得点。「日頃ああやって打てよ…と言いたい」と声が弾んだ。藤浪も復調の好投を見せ、最高の勝利で送りされた。もう十分だった。選手たちから誘われた胴上げを辞退。最後まで美学を貫いた。

 「現役を辞める時にベンチ前でチームメートに胴上げをされた。それで、もういいと思う。胴上げは勝者がするもの。もう去って行く人間ですから。選手には非常に感謝している。でも、胴上げをされる身ではないという思いの方が強かった」

 最後の挨拶では何度もファンへの感謝を強調した。「ファンの目が選手を育ててくれた。これからも球場に足を運んでもらって若い選手の野球を厳しく、そして温かく見守ってもらいたい」。春季キャンプでは連日のようにサイン入りのカード数百枚を訪れた人に手渡した。「年寄りだから早起きするんよ」。毎朝4時半に起き、約1時間のサイン書きが習慣だった。

 球団からは「オーナー付アドバイザー」への就任を打診され、「前向きに考えたい」と受諾を示唆した。「次の指導者にバトンを託し、いいファーム、いい1軍をつくっていただきたい。日本一になるために頑張って欲しい」。別れを惜しむように甲子園球場には「掛布コール」がいつまでも鳴り響いていた。(久林 幸平)

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