28日甲子園でラスト采配…掛布2軍監督、ファンに愛され、育てられた2年間

[ 2017年9月28日 12:10 ]

26日のウエスタン・リーグ広島戦、メンバー表交換時にファンの声援に応える掛布2軍監督
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 「選手よりも監督が目立ってはいけない」――。スポーツ界の現場において、しばしば聞かれる台詞だろう。それでもやはり、ファンの反応は正直だと思う。今季限りでの退任が決まった阪神・掛布雅之2軍監督。62歳。現役時代は「ミスタータイガース」の愛称で親しまれ、その存在感は常に絶大だった。ファームの遠征で全国各地の球場を巡っても、いつも1番の歓声を浴びた。試合開始前のメンバー表交換でベンチから出ただけで、スタンドが湧いた。観客からの声援にも、1つ1つ手を挙げて応えた。いつだって、ファンの目を大事にする。

 「2軍といってもプロ。1人でも多くのお客さんの前でプレーすることがベストだと思う。良い緊張感をファンが与えてくれた」

 本拠地・鳴尾浜球場でのラストゲームとなった26日。試合は1点差で敗れたものの、終了後のスタンドからは万雷の拍手が起こった。「掛布さん、ありがとう!」。「また戻ってきてな!」。別れを惜しむファンの姿を、感慨深げに見つめた。

 「顔を覚えているファンもいる。正直、“ありがとう”と言ってもらいながら球場を出たことは現役時代はなかったからね」

 現役時代は人気球団の4番を務め、言いしれぬ重圧と戦った。「厳しいときに、最後にひと踏ん張りできるかは自分次第」という考え。だからこそ、選手たちには自主性も求める。「1人でやる野球」の重要性は、15年オフの就任時から一貫していた。その一方で、1軍に送り出した選手の様子は誰よりも気にかけていた。

 「××は調子どうだ!?テレビで見てると、少し表情がな…」

 そう言って、記者に“逆取材”することも珍しくない。ファーム再調整を経て再昇格した選手の活躍を聞くと、自分のことのように喜んだ。「やはり1軍でしか得られないものが必ずある。それを1人でも多くに感じて欲しい」。大山、高山、中谷…。チームの将来を担う逸材たちは、いずれも掛布監督の息吹に触れ、大舞台を戦う。

 27、28日のウエスタン・リーグ広島戦は鳴尾浜から変更され、甲子園で開催。慣れ親しんだ本拠地で行われるラストゲーム。球場外には徹夜で入場待ちするファンの姿があった。背番号31のユニホームも目立つ。「若い子とかでも俺の背番号のユニホームを着てたりね。そういうのは励みになる。今、僕自身もファンに育ててもらっているんだから。ファンの目が僕を育ててくれた」。チームの底上げを目指し、走り続けた2年間。最後も大観衆に見守られながら、穏やかにユニホームを脱ぐ。(久林 幸平)

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2017年9月28日のニュース