ロッテ・平沢を見守る厳しくも温かい“目” 待望のプロ1号をキッカケに

[ 2017年9月20日 10:30 ]

<楽・ロ>プロ初ホームランを放った平沢はベンチの出迎えに笑顔
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 打球が右翼席最前列に飛び込むと、右翼席のロッテファンだけでなく、球場中から拍手が起きた。歓声の中で初々しく、早足にダイヤモンドを回った。ロッテ・平沢大河内野手の待望のプロ1号。仙台育英までを過ごした地元・宮城で放ったメモリアルアーチだった。試合後には記念球も手元に戻り「親に渡します」と笑顔を見せていた。

 遊撃の定位置奪取が期待されたプロ2年目の今季だが、順調ではなかった。初の開幕1軍入りも、5月中旬には2軍落ち。8月1日に再昇格も、1軍生活はわずか1カ月ほどだった。チームはBクラスが決まり「育成」面も重要視される中での厳しい現実。しかし伊東監督がそう接するのには「あれだけの素質があるんだから、普通の選手にはなってほしくない」という思いがあった。

 8月22日の楽天戦。相手先発の藤平は5回無失点でプロ初勝利を挙げた。この日ベンチスタートとなった平沢だが、指揮官の目には「ベンチにいても何かを学ぼうという態度が見られないし、出たら何とかしてやろうという気持ちが見られない。ボーッと見ているだけ」と映ったのだという。目の前では平沢にとって数少ないプロの世界での年下の選手が快投を見せている。だからこそ悔しさ、がむしゃらな姿が見たかったのだ。近い将来、チームを背負うべき逸材だからこそ「周りを蹴落としてでも自分が上がっていく、そういう姿を出してほしい」と願った。

 シーズン終盤に命じられた2軍調整。それでも平沢は朝早くからウエートトレーニングを行い、空き時間を見つけてはバットを振った。引退試合に向けて2軍施設で調整する井口が「本当に黙々と練習している。今はまだ僕がアドバイスをするときではない。自分自身でもう一皮二皮むけてほしいなという思いがある。もの凄く期待している」と目を細めるほどだった。

 三たびつかんだチャンスで故郷の空に架けたアーチ。平沢にとってきっと、大きなキッカケとなる一本になっただろう。(記者コラム・町田 利衣)

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2017年9月20日のニュース