阪神 小野“13度目の正直”プロ1勝、慢心なし「次も勝つ」

[ 2017年8月30日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神3―0ヤクルト ( 2017年8月29日    甲子園 )

<神・ヤ>6回無失点でプロ初勝利を挙げた阪神先発・小野
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 “13度目の正直”だ。阪神は29日、ヤクルト戦に3―0で勝利した。ドラフト2位・小野泰己投手(23)は5四球を与えながら6回無失点の粘投で、待望のプロ初勝利を飾った。3回にはプロ初安打を放つ、おまけ付き。長期ロード明け初戦、約1カ月ぶりの甲子園で、最高の再スタートを切った。

 長かった。13度目でつかんだ初勝利。「今年は勝てないんじゃないかな…」。自身の連敗が続いた6月は、眠れない夜もあった。試合終了をベンチで見届け、守護神・ドリスから手渡されたウイニングボールを握ると、ようやく小野に満面の笑みがはじけた。

 「今年は1勝を目標にやってきて、達成できてうれしい。リズム良く投げられたわけではないけど、野手の方にも助けてもらった」

 5四球を与えても粘りの投球で、6回2安打無失点。要所で光ったのが「生命線」と語る直球だ。富士大時代は2ストライクまで捕手のミットを真ん中に固定。「ただ、そこに直球を投げ込むだけでした」。ピンチになるまで変化球やコースの投げ分けは一切なし。それでも打者のバットは空を切り、4年秋リーグ戦では40イニングで49奪三振を奪った。あえて厳しい環境に身を置いて、磨き続けた「宝刀」。6回1死一塁でバレンティンを遊ゴロ併殺打に退けたのも、自慢の外角直球だった。

 「特別、指も長くないし、運動神経は良くないですよ。走るなんて、かなり苦手です」

 1月の新人合同自主トレで行われた3000メートル走では、8人中最下位。幼少期から身体能力が優れた方ではなかった。それでも小野は、何のコンプレックスも感じてはいなかった。「中学ぐらいから、正直投げることしか考えてない。だったら投げるために100メートル10秒台の足とかいらない。自分は投手です」。周りの目に左右されない気持ちの強さも、大きな魅力だ。

 伸びのある直球は「憧れ」から生まれた。中高時代、絶対的守護神だった藤川の動画を暇さえあれば見続けた。当時の野球ノートには「これが理想!」と太々と記してある。「自分の直球も浮き上がってくるイメージを持ちながら、軽く指先でリリースするイメージ。捕手の数メートル後ろ側に投げ込む感覚」。高校時のノートは軌道の図やリリースポイント、回転数など詳細なデータがびっしり。自らの感覚を細かく記し、イメージを刻み込んだ。

 3回はプロ初安打のおまけ付き。待望の初白星も「次も勝つのが目標。相手どうこうより、自分の投球をする」と慢心はない。信条を変えず、2勝目を目指して腕を振るだけだ。(久林 幸平)

 【小野 泰己(おの・たいき)】

 ☆生まれ&サイズ 1994年(平6)5月30日、福岡県北九州市生まれの23歳。1メートル84、78キロ。右投げ右打ち。

 ☆球歴 小1でソフトボールを始め、上津役中では軟式野球部。折尾愛真から富士大へ。16年ドラフト2位で阪神入団。

 ☆富士大で開花 折尾愛真では2年秋からエースで注目されたが、3年夏に右膝半月板を損傷。福岡大会は1イニングの登板で初戦で敗れた。プロ志望届を提出も指名はなく進学。豊田圭史監督の指導で2年春から急成長し、最速は高校時代から6キロアップし152キロになった。北東北リーグ通算22試合で12勝1敗、防御率0.85。

 ☆増量中 体は細めで、入団後は「毎朝、白米300グラムを食べるように」指導を受けた。そこから「夜も500グラム」とノルマが追加され、体重は75キロから3キロ増に。

 ☆好きな女性のタイプ 女優の本田翼。「ショートカットの方が好み」

 ☆登場曲 GReeeeNの「every」。

 ≪ワースト寸前で≫小野(神)がプロ初勝利を挙げた。ここまで新人では球団ワーストとなる開幕7連敗。もし敗戦投手になっていれば、06年松崎(楽)の8連敗に並びドラフト制後のプロ野球ワースト記録になるところだった。

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