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野球の音を聴け 島内宏明は左投げ左打ちの打撃を追い求める

本塁打を放つ楽天・島内
Photo By スポニチ

 【君島圭介のスポーツと人間】夏の甲子園は今年も多くのドラマを生んだ。99回の歴史を誇る高校球児のトーナメントだが、いつの間にか消えたものがある。

 「あのキーンという金属バットの甲高い音が好きでした」

 楽天の島内宏明が懐かしむのは、脳天を突き抜ける金属音だ。「僕の高校(星稜)時代はもう変わっていたけど、池田高校のやまびこ打線とか、あの甲高い打球音が印象的ですね」。球児の聴覚への影響に配慮して91年からバットに消音加工が義務づけられた。90年生まれの島内が知るのは過去の映像の中でしかないが、甲高い音は速く鋭い打球をイメージさせる。

 「高校時代は本当にバットを振った。振らされたというより、自分から振っていた」

 星稜では主将を務めた島内だが、人生で一番バットを振ったのはプロ1年目だという。明大を経て11年ドラフト6位で楽天入団。当初は俊足を買われた代走が多かった。その打撃力に着眼したのは16年から指揮を執る梨田昌孝だ。リーグ5位に終わった昨年秋。巻き返しを狙う梨田から、島内は「センターを一人で守るつもりでやってくれ」と声をかけられた。

 昨季まで楽天に2桁本塁打を記録した生え抜きの日本人選手はいなかった。その壁を破ると梨田が見込んだのがショートの茂木であり、島内だった。5月28日の西武戦(koboパーク宮城)で茂木が球団生え抜き初の10号到達。そして、8月2日の西武戦(メットライフドーム)で島内が到達する。梨田の眼力に間違いはなかった。

 左投げ、つまり左利きの左打者である島内の打球は速く鋭い。木製バットだが、打球音のイメージは甲高い「キーン」だ。一般的に右投げ左打ちの打者と比べ、左投げ左打ちはポイントが10〜20センチほど体に近い。右利きの左打者が右手をうまく使って前でさばくのに対し、左利きは引きつけて振る。

 決して体が大きくはない島内に長打が出るのは、左手の押し出しが強い証拠だ。ただ、島内は左利きには特有の罠があるという。「左手が強すぎるからバットを後ろからかぶせる軌道になりやすい。二塁ゴロが一番よくない」。左投げ左打ちの打撃を追いかけ、もがき苦しみながら前進を続ける。バットを振った数は高校時代やプロ1年目の方が多いが「こんなに頭で考えてバッティングしたことはない」という。

 ペゲーロら外国人トリオの活躍が目立つが、島内のバットは今季の楽天を陰で支えてきた。島内はいう。「僕はまだ試されているだけだと思う。来年は違う人が試されるかもしれない」。初めて主力として過ごすシーズン。首位を争う過酷な戦いが続き、気づけば肉体は悲鳴をあげている。それでも島内はバットを振る。速く、鋭い打球を追い求めて。 (敬称略、専門委員)

 ◆君島 圭介(きみしま・けいすけ)1968年6月29日、福島県生まれ。東京五輪男子マラソン銅メダリストの円谷幸吉は高校の大先輩。学生時代からスポーツ紙で原稿運びのアルバイトを始め、スポーツ報道との関わりは四半世紀を超える。現在はプロ野球遊軍記者。サッカー、ボクシング、マリンスポーツなど広い取材経験が宝。

[ 2017年8月29日 10:30 ]

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