メジャーリーガーのたくましさを表す「That’s baseball.」

[ 2017年8月22日 11:40 ]

右膝じん帯断裂の大けがを負ったヤンキースのファウラー (AP)
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 大リーグの選手や監督から、よく耳にする英語がある。「That’s baseball.」だ。日本語に訳すと「それが野球だ」「野球ってそんなものだ」というニュアンスだろう。押し気味に試合を進めながら不運で敗れたとき、好投していた投手が1球の失投を打たれて負けたときなど、悔やんでも悔やみきれないようなとき、気持ちを切り替えるために使っている印象だ。

 メジャーでは引き分けがなく、勝負が決まるまで試合が続く。延長18回の試合も取材した。8月2日のヤンキース―タイガース戦は雨天で試合開始が1時間26分遅れ、さらに試合中にも雷雨のため3時間11分中断し、デーゲームなのに終わったのは夜9時前だった。何が起きるか分からないのがメジャーリーグ。取材中に想定外のことが起こると、自分でも「That’s baseball.」と言い聞かせるようになった。

 すぐには切り替えられない悲劇もある。6月29日のホワイトソックス―ヤンキース戦では、ヤ軍の新人ファウラーがメジャーデビューしたが、初回の守備で右翼ファウルゾーンのフェンスに激突して右膝じん帯断裂の大ケガを負った。メジャー初打席にも立てずに交代し、即手術。ベテラン外野手ガードナーは「私が球場で見た最悪の出来事の一つだ」と悲しんだ。

 7月31日。ヤ軍はトレードでアスレチックスから右腕グレイを獲得した。エース級の補強はマスコミの注目を集めた。当日のヤンキースのクラブハウス。松葉づえをついた若者の姿があった。リハビリ中のファウラーだった。派手なトレード劇の陰で、グレイの交換要員としてア軍に移ることが決まっていた。

 報道陣に囲まれた22歳は「新しいチームに貢献するために自分ができることをするだけだ」と話していた。表情は明るかった。着ていた赤いTシャツには「BASEBALL」と書いてあった。「That’s baseball.」とは言わなかったが、悲劇を乗り越え、未来に向けてしっかりと切り換えている。メジャーリーガーのたくましさを感じた。(記者コラム・渡辺 剛太)

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