谷元のトレード、球団の深意は…悩ましい「育成」と「勝利」の両立 

[ 2017年8月12日 09:40 ]

日本ハムのドラフト1位ルーキー堀
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 日本ハム・栗山監督から、ちょっと前に聞いた言葉だ。「こういう年を大事にしないと、大変なことになる」。チームは昨季日本一に輝いたが下位に沈んでいる。

 7月下旬、中継ぎとして大車輪の活躍をしてきた谷元が金銭トレードで中日に移籍した。ファンの間でもいろんな意見があるようだ。今季、FA権を取得しただけに、早めに放出したとの見方もあるようだが、そんな単純なものではない。

 指揮官は「勝つことをあきらめたわけではない」とも言ったが、目先の試合だけを考えているわけにもいかないだろう。チームには谷元だけでなく、増井、宮西もFA権を保有しており、今後の去就はシーズン後にならなければ分からないのが現状だ。

 大谷、中田といったスター選手の動向が注目されるが、近年の日本ハムを支えてきたのは、12球団屈指の強力ブルペンだったことは間違いない。3年後、5年後、そして10年後を考えれば、若いリリーフ投手を一刻も早く育成をしなければならない状況である。

 勘違いをされると困るが、トレードなどのチーム編成を行うのはフロントの仕事で、現場を預かる指揮官ではない。1軍で登板機会が増えている石川直、田中豊、玉井といった若手頭角を現さなければ、球団の未来も苦しくなる。厳しい場面で起用しなければ意味はない。一方で若手を起用すれば、谷元の登板機会が減ってしまう。

 日本ハムの関係者から、これまで何度も「うちは選手ファーストだ」と聞かされてきた。来季以降の戦力だけを考えれば、谷元を放出するならば、有望な若手との交換を求めるのが普通だろう。谷元はそれに見合うだけの投手であるが、そんな損得勘定も抜きにした金銭トレードだった。経験豊富なベテランの力を必要としている中日への移籍は、三重出身の右腕のためになると考えたものだろう。

 もちろん、ファン心理は別にある。長年応援してきた選手を、近くで見守りたい気持ちも強いだろう。しかし小笠原、森本、鶴岡、小谷野、糸井、陽岱鋼、ダルビッシュら、これまでも多くの主力が他球団へ移籍した。それでもチームは北海道移転後04年から2度の日本一を含めてリーグ優勝は5度。Bクラスはわずか3度だけと結果を残してきた。

 8日からドラフト1位の高卒左腕・堀が1軍に昇格した。プロ野球の世界で、「育成」と「勝利」を両立させることは極めて困難だが、日本ハムは「スカウティング」と「育成」を看板する。残りのシーズンをどのように戦い、来季以降にどうつなげていくだろうか。その答えは数年後、明らかになる。(記者コラム・横市 勇)

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