侍J・稲葉新監督 14年前の秘蔵写真 実直な人柄は今も変わらず…

[ 2017年8月7日 09:30 ]

5000万円の真剣を手に精神修養する稲葉氏(2003年2月11日撮影)
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 本人にとっては少し恥ずかしいかもしれないが、1枚の秘蔵写真がある。真剣を持ち、じっと見つめる稲葉篤紀の姿だ。

 「真剣は初めて。凄いわ。やっぱり、緊張感が全然違う」。そう目を輝かせて言ったのは、今から14年も前の2003年のことだった。01年に打率・311、25本塁打、90打点と活躍し、不動の3番打者としてヤクルトをリーグ優勝に導いた。内角をさばくスイングは切れ味抜群だった。しかし、続かない。02年は打撃不振に陥り、迎えた03年2月の沖縄・浦添キャンプ。刀のように、バットの切れ味を取り戻してほしいという思いもあって、休日に那覇市内の武道具店に連れ出した。当時、30歳だった稲葉は5000万円の名刀を手にし、見入っていた。

 ヤクルトでは、その後も01年以上の成績を残すことはできなかった。環境を変えたい思いから、05年2月に日本ハムにFA移籍。「エンジョイ・ベースボール」の新庄剛志との出会いもあって、楽しそうに野球をやっていた。結果も残し、日本代表にも選ばれた。08年北京五輪、09、13年WBC。日本のトッププレーヤーとして存在感は増し、通算2000安打も達成した。ヤクルトでくすぶっていたときの印象が強い記者からすれば、まぶしく映った。

 引退からわずか3年。今度は侍ジャパンの監督に就任した。しかも、2020年東京五輪で金メダルを目指す指揮官として選ばれた。この男はどこまで大きくなるだろう。それが正直な感想だ。裏表がなく、実直な人間。昔からずっと変わらない。だから、誰からも慕われる。理想の監督像も「良き兄貴的な存在。たくさんコミュニケーションを取って、どんどん動き回りながら、活発なチームをつくっていきたい」と言っていた。今月3日に45歳になった若々しい侍指揮官。ふと、真剣を手にした昔の姿が思い浮かんだ。(記者コラム・飯塚 荒太)

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2017年8月7日のニュース