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高校野球にサスペンデッドゲームを――「雨中の激闘」はいらない

第70回全国高校野球選手権大会滝川二−高田、降りしきる雨が甲子園を泥沼と化し、ついに8回裏2死、降雨コールドとなった
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 【内田雅也の広角追球】夕暮れ時、試合は大詰めだった。無人駅の裏手にあった空き地で団地チームとの決戦だった。

 オウムとあだ名された捕手が「もう、ボール見えんぞ」と訴えている。家が近くのマエダの母親は「シゲちゃん、晩ご飯よ〜」と呼びにきた。カレーのにおいが漂っていた。もう限界だ。

 「じゃあ、続きは明日な」

 「覚えとけよ。ツーアウト、一、二塁やぞ」

 こうして皆、家路についた。小学校4年生当時の思い出だ。大人の監督がいる少年野球クラブではなく、子どもだけで作った野球チームだ。帽子もそろえて戦った。

 真剣勝負だ。ルールも公平さを重んじた。だから、日没サスペンデッドゲーム(一時停止・継続試合)を採用していた。

 高校野球もサスペンデッドゲームを採用すべきではないか。以前から考えていることだ。

 今夏も甲子園を目指す地方大会で、試合制度に疑問を抱く試合が相次いだ。降雨によるものだ。

 静岡大会決勝、藤枝明誠―日大三島(7月26日・草薙)は12―2と藤枝明誠リードで迎えた7回表、雨が激しくなり中断。実に2時間56分後に試合を再開した。

 グラウンドは水が浮いて泥んこ。投げる投手や守る野手は最悪の状態で「雨中の激闘」と呼ぶには気が引ける得点を取り合いとなった。結局23―10で藤枝明誠が甲子園出場を決めた。

 規定では決勝にはコールドゲームがなく、9回まで戦うことが定められていた。甲子園の全国大会と同じだ。雨で再開ができない場合はノーゲームとなる。試合終盤、大量10点のリードを無にするのはあまりに忍びない。長時間の中断、グラウンドコンディション不良でも試合を決行した理由も分かる気がする。

 こんな時こそ試合を一時止めてサスペンデッドとし、翌日に続きをやればいい。雨で損得が生まれるような理不尽はなくなるではないか。

 日本高校野球連盟(高野連)に尋ねた。竹中雅彦事務局長は「ええ、言われることはよく分かりますよ」と、非情さや不公平感のある現状をよく理解していた。「また、いっぺん技術・振興委員会にはかってみようかと考えています」。再検討を約束してくれた。

 甲子園の全国大会の規定では7回終了で試合成立、コールドゲームとなる。7回未満はノーゲームだ。このため雨による非情な結末が生まれる。

 1988年夏の第70回選手権大会1回戦。高田(岩手)は滝川二(兵庫)に3―9の8回裏2死一、三塁で中断、11分後、降雨コールドゲームが宣告され敗れた。全国大会でのコールドは56年ぶりだった。

 本紙に『甲子園の詩』を連載していた阿久悠氏は『コールドゲーム』と題した詩で、最後まで戦えなかった高田を思いやった。<高田高の諸君/きみたちは/甲子園に一イニングの貸しがある/そして/青空と太陽の貸しもある>

 2003年夏の第85回大会1回戦、駒大苫小牧(南北海道)―倉敷工(岡山)。駒大苫小牧が8―0と大量リードした4回裏、雨が激しくなりノーゲーム。翌日、2―5で敗れた。

 この悔しさが翌04年の全国優勝、05年の連覇につながった――とのストーリーは当時の選手たちの慰めにはなったかもしれない。

 高野連は何もサスペンデッドを毛嫌いしているわけではない。軟式の全国大会で採用していた。ところが、2014年の決勝、崇徳(広島)―中京(岐阜)戦(明石トーカロ球場)は0―0のまま延長戦に突入、実に3度のサスペンデッドで4日間にわたり延長50回に及んだ。50回表に中京が3点をあげ、3―0で優勝が決まった。

 硬式に比べ得点が入りづらい軟式で長い延長戦を避け、選手の健康面に配慮した規定だったが、日本高野連は「サスペンデッドの限界が見えた」と軟式でのタイブレーク制度の導入を決めた。翌15年から採用し、延長12回を終えて同点の場合、13回からは無死一、二塁から行う。高校野球特別規則で「サスペンデッドゲームは採用しない」と明記した。

 硬式でもタイブレーク採用の流れにある。今春の選抜大会で2試合連続延長15回引き分け・再試合が起きたことを受け、日本高野連技術・振興委員会は6月、「導入はやむをえない」と結論をまとめた。早ければ11月の理事会で承認され、来春の選抜大会から採用される。すでに15年から春季地区大会で試験的に実施されている。

 ただし、このタイブレーク制度はあくまで長い延長戦を避けるための措置だ。五輪やワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など国際試合でも採用されており、その流れに沿うのは仕方がないとしよう。本音は同点決着の場合もサスペンデッドで翌日や後日に継続試合を行う方法が最適と考えるが、この論はさて置く。

 問題は降雨や日没などの場合だ。延長13回以降はタイブレークなら、9回未満の試合はサスペンデッドゲームを採用すればいい。

 日本高野連は運営上の問題もあるという。ある幹部は「サスペンデッドだと翌日、1イニングだけで終わる場合もある。そのために甲子園球場にお客さんから入場料を取り、応援団も入れ、警備員や裏方さんたちにも働いてもらわないといけない」と話した。

 確かに大変かと思う。だが「プレーヤーズ・ファースト」(選手第一主義)の立場を貫く高校野球である。そんな苦労も乗り越える姿勢であってほしい。 (編集委員)

 ◆内田 雅也(うちた・まさや) 1963年2月、和歌山市生まれ。本文に書いた無人駅は南海電鉄(当時)貴志川線の神前(こうざき)駅で、今は空き地に住宅が建つ。路線は後に和歌山電鉄が引き継ぎ、猫のたま駅長で有名になった。小学生時代は学童軟式野球から硬式のリトルリーグに進んだ。日本選手権(神宮)では14―0のリードながら、あわや日没ノーゲームを経験した。

[ 2017年8月1日 09:30 ]

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