【キヨシスタイル】高校野球で出会った恩師や仲間が人生の道しるべになるはず

[ 2017年7月25日 10:30 ]

 甲子園の地方大会が大詰めを迎えている。夢かなわず最後の夏を終えた球児はどうしているかな。

 46年前を思い出す。わが安積商(現帝京安積)は福島大会2回戦で敗退。双葉に2―3のサヨナラ負けを喫した。

 スクイズを仕掛けられ、投手から主将で捕手の私にグラブトス。1メートル前でアウトのタイミングだったけど、ミットにボールが入ってなかった。落球したんだ。

 みんな泣いてたな。でも、私は泣かなかった。先があるから。といっても、どこで野球を続けられるか決まっていたわけじゃない。

 プロ野球は憧れの世界。三塁を守っていた1年生のときは大洋(現DeNA)のスカウトが来てたと後で聞いたけど、2年でショート、3年で捕手とポジションが移るうちに来なくなったらしい。

 9人きょうだいの8番目。酪農をやってた実家の経済状態を考えたら大学進学なんてとんでもない。安積商に入ったのも特待生コースがあったから。どこか地元の会社に就職してオール常磐というクラブチームで野球を続けられたらいいなと思っていた。

 そんな私に「駒大に行かないか」と声を掛けてくれた人がいる。1年生のときから見てくれていた郡山西高の監督で、駒大OBの石本哲禅先生だ。

 2日間のセレクションに参加して、けっこう打った。すんなり合格。就任したばかりの太田誠監督は石本先生の1年後輩だった。今度も特待生。私は高校、大学と授業料は全く払っていない。

 無名校でも明るく元気に頑張っていたから道が開けたんだ。毎日マッサージをしてくれたおふくろにも感謝したね。矢吹町の自宅から学校まで約1時間。朝6時半に出て夜9時に帰る。食事をして風呂に入り、10時半くらいから20〜30分揉(も)んでくれるんだ。気持ちよかったなあ。

 球児はそれぞれ家族の思いも感じた3年間だったと思う。恩師、一緒に汗や涙を流した仲間…。これからの人生の道しるべになるんじゃないかな。

 プロを目指す人は大学、社会人からクラブチーム、独立リーグと選択肢は増えている。もう一回軟式に戻って草野球を楽しむのもいい。どんな道に進んでも、野球から離れないでほしいな。 (スポニチ本紙評論家・中畑 清)

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