【斎藤隆MLBレポート】球団のビジョン鮮明 高まる期待と資産価値

[ 2017年6月22日 11:30 ]

ドラフト会議で発言するMLBのマンフレッド・コミッショナー(AP)
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 今月12日から3日間、大リーグのドラフト会議が行われました。パドレスはドラフト1巡目(全体3番目)から上位6人まで全て高校生を指名。これは球団史上初めてのことでした。オーナーは近い将来、過去にないような若い選手中心のチームでワールドチャンピオンを目指すという野望を持っています。補強に頼るのではなく、自前でスター選手を育てる。今年の傾向として、大学生に有望選手が少なかったこともありますが、球団のビジョンが鮮明に表れた格好です。

 2、3番目で指名した高校生2人は、一般的には育成に時間がかかるとされる捕手。だが、私も、野茂英雄さん(球団アドバイザー)も、捕手の重要性はずっと球団に訴えてきました。マイナーに優れた捕手がいないと、投手も育たない。これはうれしい指名でした。

 米国では毎年4月に経済誌「フォーブス」がMLB30球団の資産価値ランキングを発表します。入場料やグッズ売り上げの収入などから、独自に算出しているもので、パドレスは全体21位の11.3億ドル(約1250億円)。1位のヤンキースの37億ドルと比較すると3分の1以下ですが、前年比では26%増で、各球団の平均伸び率19%を大きく上回っています。チームは昨季、地区最下位でしたが、マイナー組織の充実が、ファンの「数年後」への期待度を高め、資産価値を上げているのでしょう。

 現オーナーであるオマリー一族が球団を買収した12年時の資産価値は8億ドル(約888億円)でした。つまり、この5年間で400億円近く価値が上がりました。球団買収が多い米国では、経営ビジネスとして成り立っていることを示すものであり、このような数字が出ると、球団の人間としてはやりがいを感じます。日本のプロ野球も12球団の資産価値が出れば、非常に面白いと思います。

 今回の米国滞在中、私は主にレークエルシノアという1Aの一番上のカテゴリーにあるチームを見ています。昨年のドラフト上位2人の選手も在籍しており、着実に成長しています。最大の弱点だったドラフトから改革したパドレス。2、3年後、どんなチームになっているか楽しみでなりません。 (パドレス球団アドバイザー)

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2017年6月22日のニュース