興国 投打の柱そろった!42年ぶり甲子園へ勝算あり「波に乗れれば」

[ 2017年6月21日 12:53 ]

力強い直球を披露する興国のエース・植田健人
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 第99回全国高校野球選手権大会(8月7日開幕、甲子園)の大阪大会組み合わせが20日に決まった。一糸乱れぬ正確なスローイングに、俊敏な打球処理。鍛え抜かれた動きからも、戦力の充実ぶりが伝わってくる。今夏、1975年以来、42年ぶりの甲子園を目指す興国。緊張感のある練習風景に鋭い視線を向けながら、田中英樹監督は大阪桐蔭、履正社の2強がリードする激戦区での戦いに思いをはせた。

 「まだまだ力は足りませんが、期待値、楽しみのあるチーム。接戦を制し、大会で波に乗ることができれば、勝機はあります」

 アマチュア野球での豊富な指導実績を買われ、古豪復活を託された。27歳の若さで社会人・日立造船有明(熊本)の兼任監督に就任。村野工(兵庫)では17年間、監督・部長を務め2度の甲子園出場を果たした。法大でも4年間の助監督を経験。一昨年秋から興国の監督に就任した。

 「低迷している野球部を復活させたいという草島理事長の思いが、ひしひしと伝わって来ました。自分のこれまでの経験を生かして、何とか貢献することができればと考えております」

 現状を伝え聞いていたとはいえ、大阪の高校球界をリードしたかつての面影はどこにもなかった。「これでは大阪で勝てない」というのが、就任当初の率直な第一印象。キャッチボールを始めとする基礎技術に加え、規律ある日常生活を部員に求めることから改革はスタートした。

 「キャッチボールを徹底的に見直したことと、挨拶、整理整頓などの日常生活についても口酸っぱく指導してきました。技術を生かすのは、心の部分。基本技術は指導から外せませんが、心の部分をおろそかにしていては、技術の上達もありません」

 何よりもキャッチボールの重要性を説き続けた。「足の使い方が全て」。できなければ1時間でも、2時間でも反復させた。ボール回し、塁間のクイックスロー、上手、横手のスナップスロー…。様々なメニューを組み、スローイングの精度を高めていった。

 野球部員である以前に、人としてのあり方も粘り強く説き続けた。授業を集中して聞けなければ、2時間を超える試合に集中できるはずがない。野球に打ち込める時間は、長い人生から見れば極わずか。野球を通じて何を学ぶのか、という部分が社会人としての生き様を左右する。「彼らが社会に出たときに、気づくときが来る」。人生の先輩としても、野球部員に熱く訴えかける。

 68年夏に全国制覇を成し遂げた伝統校も、近年では大阪大会初戦で姿を消すことが珍しくはなくなった。夏の大阪大会での上位進出は、87年のベスト8が最後。昨秋も4回戦で大商大高の前に敗れた。延長10回、1―3での敗戦に打力不足を痛感。冬場は1日1200スイングをノルマとし、手の皮がボロボロになるまでバットを振り込ませた。

 「ミーティングでの目つきが変わってきましたし、1球に対する集中力、執着心も高まってきています」

 打力アップには、練習方法にも工夫を凝らした。選球眼を磨くために、冬場は打者がブルペンでの投球練習で目慣らし。フリー打撃でも審判をつけ、1球1球への集中力も同時に高めた。「打ちにいきながら、ボールを見送れるようになった。1球で局面は大きく変わりますから。出塁率、打率も上がるし、四球を取れたことが春季大会での得点力アップにつながったと思います」。目に見えた数字に表れにくいプレーにも、目を光らせる。

 指揮官のグラウンド内外における地道な指導が浸透しつある。今春は初戦で浪速に6―5でサヨナラ勝ち。3回戦では近年の府大会で上位進出が目立つ大冠を7―5で下した。初戦からの4試合で30得点。5回戦で昨秋の大阪チャンピオン・上宮太子に1―3で敗れたが、浮上へのきっかけはつかんだ。

 今春からは97年夏の甲子園で優勝しロッテで5年間プレー、智弁和歌山で部長を務めた喜多隆志氏が部長に就任。元阪神投手の清原大貴氏がスーパーバイザーを務めるなど環境は整った。「OBはもちろん、応援してくださるオールドファンはたくさんおられる。古豪の気概を持って、やってほしい」。草島葉子理事長は、野球部への全面バックアップを惜しまない。

 140キロ台中盤のストレートを投げ込むエース右腕・植田、今春大阪大会で4戦連発5本塁打をかっ飛ばした4番・中野と、投打の柱は揃った。初戦の相手は貝塚南(9日・南港)に決まった。一戦必勝。優勝戦線へ食い込むチャンスは十分にある。

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