楽天・岸、新たな物語の幕開け 観客だった日から15年後のお立ち台

[ 2017年5月30日 10:00 ]

お立ち台で満面の笑みを浮かべる岸
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 15年前の02年5月29日。宮城球場(現Koboパーク宮城)の外野席から試合を見つめる高校生がいた。開催されていたのは広島―中日戦。同級生たちと観戦に訪れた17歳は、左翼席と右翼席を行き来していた。

 「広島の応援が面白そうだなと思ったら、そっちに行ったりして。本塁打のボールを捕ろうとしたら、みんなで捕りにいったから(殺到して)結局、捕れなかった」。東北に本拠地を置く球団がない時代。数少ないプロ野球生観戦の機会を存分に楽しんだ。

 15年が経った17年5月28日。その高校生は32歳となり、スタンドではなくマウンドに立っていた。16年まで10年間をともにした古巣のチームメートを相手に力投し、7回3安打2失点。移籍した球団での本拠地初勝利を挙げた。ヒーローインタビューのお立ち台にも初めて立った。05年に創設された球団にとって、史上最多となる2万7314人の前で声を張り上げた。「これだけお客さんが入っている中で勝てて最高です」。満員御礼の客席から喝采を浴び、普段はスマートな男が相好を崩した。

 楽天・岸孝之。15年前、宮城球場を訪れた1万5000人の1人だった男は、Koboパーク宮城で2万人超の視線を集める1人となって帰ってきた。大学まで22年間を過ごした仙台。愛着ある故郷での物語が再び幕を開けた。(記者コラム・黒野 有仁)

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2017年5月30日のニュース