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果にして強たることなかれ――清宮幸太郎とガッツポーズ

<早実・日大三>9回無死二、三塁、清宮が中越えに同点3ランホームランを放つ
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 【鈴木誠治の我田引用】ゴールデンウイーク11試合で8発と、早実の清宮幸太郎選手が本塁打を量産している。4月27日、今思えば、その前触れだった春季高校野球東京都大会決勝を、神宮球場で取材した。早実と日大三の対決は逆転に次ぐ逆転の末に延長12回、早実が18―17でサヨナラ勝ちした。この試合で2本塁打した清宮選手の取材で、印象的な言葉に出合った。

 「野球人生で1回もガッツポーズをしたことがなかったけど、思わずしてしまいました」

 その場面は14―17の9回裏無死一、三塁。同点の3ラン本塁打を放った後、清宮選手は一塁ベースを回って小さく拳を握ったらしい。補足すると、チームの勝利やチームメートの活躍でガッツポーズは何度もしているが、自分の本塁打などでガッツポーズをしたことは、小学生時代からなかったようだ。

 「どうしてかね」

 女勝負師のスゥちゃんに聞くと、答えは簡単だった。

 「相手投手のことを考えているからじゃないの」

 野球には、投手と打者の1対1の勝負という側面がある。そこで得た結果に対する歓喜の表現は、相手への挑発や誇示につながることがある。

 故に善なる者は果のみ

 敢えて以て強を取らず

 果にして矜(ほこ)ることなかれ

 果にして伐(ほこ)ることなかれ

 果にして驕(おご)ることなかれ

 (中略)

 果にして強たることなかれ

 「老子」にある「道を以て人主を佐(たす)くる者」という文章の一部だ。「果」は目的を果たすという意味のようで、目的を果たしたら、自らの強さを誇示したりしないのが、「善」であると説いている。

 日本には相手に敬意を持つとか、勝っても喜びを表に出すなという「武道」の精神がある。しかし、清宮選手の場合、歓喜を一切、表に出さないのではない。チームの勝利につながる喜びは、何度も表現している。自分の本塁打でチームメートが喜べば、一緒になってハイタッチもする。

 ただ、相手投手に、それを誇示するような歓喜は見せない。打席やベースランニング中に、相手に見せつけるようなガッツポーズはしないということだろう。彼にとっての「果」とは、チームが勝つことであって、相手投手を打ち崩すのは、そのための手段という精神性だろうか。

 簡単に言えば、フォア・ザ・チームと、相手に対する敬意で片付いてしまうが、老子には、こんな言葉もある。

 人を知る者は智、自らを知る者は明なり

 人に勝つ者は力あり、自らに勝つ者は強し

 ガッツポーズをしたら相手投手はどう思うかという「智」を持ち、そのうえで、自分の行動を考える「明」がある。相手投手を打ち崩す「力」を持っているが、そのうえで、自分に勝たなければ「真の強さ」は手に入らないことを知っている。

 今回も、こじつけが過ぎたか…。

 ◆鈴木 誠治(すずき・せいじ)1966年、浜松市生まれ。清宮選手の父・克幸氏には、ラグビー担当時代にお世話になりました。克幸氏は頭がよすぎて、わたしは自分のアホさかげんを自覚させられるのが、つらかったですが、その知力を武器に戦略をズバズバと当て、さらに勝利に涙する情熱も持つ名選手、名監督です。

[ 2017年5月9日 09:00 ]

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