阪神・糸井 移籍後初甲子園アーチは空砲「次、やるだけ」

[ 2017年4月30日 07:30 ]

セ・リーグ   阪神3―6中日 ( 2017年4月29日    甲子園 )

<神・中>初回、大観衆のスタンドへ糸井が移籍後初の甲子園アーチを放つ
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 阪神の糸井嘉男外野手(35)が29日の中日戦(甲子園)で、移籍後初の甲子園アーチを放った。2点を追う初回に一時は同点となる、5日ヤクルト戦以来18試合ぶりの4号2ランを右中間スタンドに運んだ。

 右から左へ強烈に吹く浜風が神風となった。フルカウントから左腕・バルデスの低め真っすぐを豪快にすくい上げ舞い上がった打球は、徐々に中日の右翼・平田の後退を誘い、右中間席へと飛び込んだ。「阪神糸井」として本拠地9試合、34打席目に生まれた4号2ランは移籍後初となる甲子園アーチとなった。

 「打った瞬間、角度が上がりすぎかなと思いましたが、スタンドまで届きました」

 虎党が、糸井自身が待ちわびた一発は“らしい”弾丸ライナーではなく滞空時間の長いものだった。一塁を回っても表情は緩まない。それどころか、本当に入ったのかという驚きにも似た表情を浮かべた。二塁ベースをすぎ三塁へ向かう途中で右中間方向に顔を向け、本塁打となったことを改めて確認した。

 甲子園での一発は日本ハム時代の12年5月16日以来、2本目。プロ14年目の百戦錬磨のベテランでも、聖地での本塁打量産は容易なことではない。左打者には特有の浜風が「大きな壁」として立ちはだかる。それでも、この男は“逆境”を楽しむ強さを持っている。

 オープン戦期間だった3月11日。試合前の全体練習で外野をランニングしていた糸井は、フリー打撃中だった左打者の打球がことごとく風に押し戻される様子を目撃。浜風の脅威を「えぐいな」と表現する一方で、顔は笑っていた。「そういうのも(浜風)あるかもやけど、逆にそれでぶち込んだらかっこいいやん」。大きな障壁をぶち破るかっこよさ―。超人のモチベーションは、実に純粋なところにある。

 発奮材料もあった。はとこにあたる報徳学園の糸井辰徳選手が春季兵庫大会・須磨翔風戦に「8番・左翼」で2回戦に続き先発出場。右越え二塁打を放つなどの活躍を、試合前に伝え聞き「え、レギュラー!?打ったんや〜」と喜びを隠さなかったが、自身はそれ以上の一撃を放ってみせた。

 チームの敗戦に、試合後は「次、やるだけ」と短い一言に決意を込めた。打点を挙げた試合の連勝も「7」で止まったが、頼れる中軸の新たな一撃が反攻材料になるはず。ゴールデンウイークは始まったばかり。糸井が大型連勝をもたらしてくれると信じたい。(久林 幸平)

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