東大40歳右腕 夢の神宮マウンドへ 15日FL慶大戦先発決定

[ 2017年4月14日 09:30 ]

フレッシュリーグでの先発が決まった40歳の東大・伊藤
Photo By スポニチ

 前代未聞、40歳右腕が神宮のマウンドに上がる。東大・伊藤一志投手(3年)が15日に行われる東京六大学フレッシュリーグの慶大戦で先発することが13日、分かった。中学、高校と野球経験がなく、医大卒業後は麻酔科の医師として病院勤務した異色の経歴を誇る。アラフォー世代には大きな勇気を与えそうだ。

 ついに夢がかなう。今春から導入された新人戦・フレッシュリーグとはいえ、40歳の伊藤が念願の東大のユニホームをまとい、神宮に立つことになった。「もちろん緊張しますが、チームの勝ちにつながる投球をしたい」と言葉に闘志を込めた。

 愛知・東海高2年時に、東大が法大から勝ち点を挙げるシーンをテレビで目にし、東大への憧れを抱いた。現役での受験は不合格。浪人を経て都内の医大に進学した。大学時代は準硬式野球大会で優勝したこともあるが、神宮への思いは募るばかり。08年国家試験に合格して医師になったが、夢を諦めきれず、病院勤務をしながら受験勉強し、12年に東大文3に合格。仕事の引き継ぎなどを終えるまで休学し、15年4月に晴れて入学。「38歳の新入部員」として話題になった。

 10、20代のチームメートに交じっての練習では体力差は歴然。直球の最速は120キロ台だが、打撃投手をしながら投球練習を積み、普段も妥協することなく練習に取り組んできた。浜田一志監督は「体力的には厳しい部分はある。でも4年間生活を犠牲にして野球に懸ける思いや意気込みは伝わっていた」と評価する。

 フレッシュリーグでは、東大に限って3、4年生も出場できる特別規則が設けられている。先発起用を決断した指揮官も「良い投球をすればもちろん今後リーグ戦で投げるチャンスもある」と期待を寄せる。東京六大学野球連盟の内藤雅之事務局長は「40代選手の登板は前代未聞」と説明しており、異色右腕の登板は大きな話題を呼びそうだ。

 ◆伊藤 一志(いとう・かずし)1976年(昭51)8月19日、愛知県生まれの40歳。小4から小6まで学童野球でプレー。東大野球部入りを夢見て受験もかなわず、浪人の末都内の医大に進んで準硬式野球部に所属。31歳で医師免許を取得。それでも東大を再受験し、12年春に東大合格。15年春に入学し、野球部に入部。好きな授業は「機能解剖学」。1メートル71、73キロ。右投げ右打ち。

 ▽東京六大学フレッシュリーグ 従来トーナメント方式だった新人戦を、各大学1回戦総当たりのリーグ戦形式に変えて今春から導入された。背景には部員数の増加があり、より多くの選手に神宮球場を経験してもらい、リーグ全体のレベルアップにつなげる狙いがある▽開始は午前8時。1時間50分を超えて新しいイニングに入らない▽プロ野球併用日や月曜には開催しない▽リーグ戦の第1試合と同カードを行い、メンバーに入った選手はその日のリーグ戦には出場できないなどの規則がある。東大は他校のようにスポーツ推薦がなく1年生の入部が未定のため、3、4年生も出場が可能。

 ≪東大の異色選手≫

 ☆女性選手 99年に左腕・竹本恵投手が入部。東京六大学で史上初の日本人女性プレーヤーとなった。同年秋の新人戦に登板して初の神宮のマウンドを踏み、3年春の慶大1回戦では史上初めて日本人女性としてリーグ戦に登板した。通算成績は4試合0勝1敗。

 ☆高齢選手 96年に入部した高橋将人は「35歳の新人選手」として注目を集めた。慶大卒業後に塾講師を務め、95年春に東大に入学。野球経験がなかったため1年間の体づくりを経て、2年時に野球部の門を叩いた。また、06年には29歳の1年生・森本真が公式戦でベンチ入り。試合出場はなかったが、ボールボーイを務めた。

続きを表示

2017年4月14日のニュース