【石井一久クロスファイア】ハイボールに変化した投手トレンド

[ 2017年4月12日 10:00 ]

開幕戦に登板したカブスの上原 (AP)
Photo By スポニチ

 メジャーの投手には、トレンドがある。例えば、僕がプレーしていた02〜05年頃は、球筋系で、ボールゾーンから入れる「バックドア」や「フロントドア」がはやりだった。その使い手と言えば、カブス、ブレーブスなどで「精密機械」の異名を取ったグレグ・マダックスだ。カットボールもトレンドだった。直球をわずかに動かして詰まらせる。ヤンキースの守護神マリアノ・リベラの影響もあったのだろうか。

 今はどうか。昨年あたりから高めのフォーシーム、いわゆる「ハイボール」がトレンドになっている。マリナーズの岩隈はゴロを打たせる「グラウンドボール・ピッチャー」だが、昨季後半から高めの直球をうまく使うようになった。カブスの上原は元々、回転のいい直球を武器としており、フォークとの高低のコンビネーションが40歳を過ぎても活躍できる要因の一つだ。

 「メジャーの投手はボールを動かす」と言われるが、きれいな回転のいいフォーシームが再び注目されている。一般的に、メジャーの打者はローボールヒッターが多い。投手は低めに鋭く動く球で勝負してきたが、打者も研究を重ね、低めに対応しやすいスイングの軌道になっている。エンゼルスの強打者トラウトがその典型だ。だからこそ、高めのフォーシームが生きる。ローボールスイングの打者が多いので、高めの方がバットとの接点は小さくなる。

 最近では解析システム「スタットキャスト」で、ボールの回転数も分かるので、「ハイボール」を使える投手が重宝される。上原は球速は140キロ前後でも、1分間の回転数は2400回転(メジャー平均は2100回転)を超える。ドジャースの中継ぎ右腕ハッチャーは、マーリンズからトレードで移籍する際に、フォーシームの回転数を評価されたようだ。

 今季は「ハイボール」に注目してほしい。時代の中で、投手のトレンドというのはいつの間にか生まれる。それがいつ、どこで、どのように生まれるかは、昔のたまごっちと同じで僕には分からない。それがトレンドだ。 (スポニチ本紙評論家)

続きを表示

2017年4月12日のニュース