ノーノーあと2人…広島・加藤“外れの外れ1位”からの初登板快投

[ 2017年4月8日 05:30 ]

セ・リーグ   広島4―1ヤクルト ( 2017年4月7日    マツダ )

<広・ヤ>初回2死、山田(手前)を空振り三振に仕留める加藤
Photo By スポニチ

 ノーヒッター、惜しい!広島のドラフト1位ルーキー・加藤拓也投手(22)が7日、ヤクルト戦でプロ初先発し、9回1死までノーヒットノーランの快投を演じた。デビュー戦での快挙達成まで、あと2人と迫りながらバレンティンに左前打を浴びたが、8回1/3を2安打1失点でセ・リーグの新人で一番乗りとなるプロ初勝利を飾った。チームは1分けを挟んで5連勝。「外れの外れ1位」で入団した右腕が、昨季のセ王者に新風を吹かせた。

 球場にため息と悲鳴がこだました。9回1死一塁、加藤の132球目だった。初球だ。バレンティンへ甘く入ったフォークを振り抜かれると打球は三遊間を抜けていった。

 「まあ、こんなもんだなと思った。(守備で)いいプレーもたくさんしてもらったので(記録も)あるのかなと思ったけど、そんなに甘くない」

 デビュー戦でのノーヒットノーランとなれば、87年8月9日に中日・近藤真一が巨人戦(ナゴヤ)で達成して以来30年ぶり2人目の偉業だったが、あと2人というところで夢はついえた。さらに1死一、三塁から雄平に右前適時打を浴びたところで降板。それでも守護神・中崎の力を借りながら8回1/3を1失点でセ新人で一番乗りの初勝利だから、表情は充実感に満ちていた。

 この日は最速151キロを計測した直球にフォーク、スライダーを駆使し、7四球を与えながら7三振を奪う快投だった。お立ち台で加藤も「次はもっと四球を減らしたい」と反省したが、「荒れ球」を武器に思わぬ形で巡ってきたチャンスをものにしたのも事実だ。

 オープン戦は2試合で1勝0敗、防御率2・70と結果を残したが、5回を投げ切るのに100球前後を要する制球難がネックで開幕を2軍で迎えた。しかし、先発予定だったジョンソンが咽頭炎で5日に出場選手登録抹消。2日前に先発が決まると、荒れ球を発揮して初対戦のヤクルト打線に的を絞らせなかった。

 元々強肩で中学では捕手。慶応高1年秋に投手へ転向し、慶大で頭角を現した。2年秋の明大戦では延長12回を214球完投。4年秋の東大戦では5四球を与えながらノーヒットノーランを達成した。荒々しさと無尽蔵なスタミナ。さらに、自発的に始めたヨガで「相手と同じリズムにならないように」と呼吸を意識して登板することで、精神的な余裕も生まれた。

 ドラフト会議では、創価大・田中(ソフトバンク)、桜美林大・佐々木(ロッテ)の抽選を外した広島から、ようやく名前を呼ばれた。「外れの外れ1位」だが、そんな肩書はもう関係ない。プロ初マウンドで135球の熱投。そんな姿はまぶしいほどに輝いていた。次戦は14日からの阪神3連戦(甲子園)が有力だ。引き分けを挟んで5連勝を飾った緒方監督も「たいしたもんだ。これで(次回先発が)なかったらうそでしょ!」と目尻を下げた。リーグ連覇の使者に、期待のルーキーが名乗りを上げた。

 ◆加藤 拓也(かとう・たくや)1994年(平6)12月31日、東京都生まれの22歳。慶応高1年秋に捕手から投手に転向し、3年夏は神奈川大会8強入り。甲子園出場なし。慶大では1年春からリーグ戦に出場し、4年秋の東大戦で史上24人目のノーヒットノーランを達成。通算26勝を挙げ、歴代15位の309奪三振を記録。1メートル76、88キロ。右投げ右打ち。

 ≪8回以上を無安打 近藤以来30年ぶり≫新人の加藤(広)が8回まで無安打に抑える快投でデビュー戦勝利を挙げた。新人の初登板初勝利は佐々木(ロ)に次ぎ今季2人目、広島では昨年の横山に次ぎ12人目。また、新人が初登板初勝利の試合で、8回以上無安打に抑えたのは、87年8月9日巨人戦でノーヒットノーランを達成した近藤(中)以来30年ぶり。ノーヒットノーランを達成すれば、史上79人目で、90度目、新人では近藤以来両リーグ4人目の快挙となっていた。また、あと1人打ち取って、9回2死で逃していれば、史上23人目、25度目で新人初の珍しい記録になるところだった。なお、広島では14年に九里、15年に薮田も初登板勝利。同一球団からの4年連続新人初登板初勝利は、46〜48年南海、50〜52年国鉄の各3年を抜く史上初の記録になった。

続きを表示

この記事のフォト

2017年4月8日のニュース