ハム戦力外から大仕事 ヤクルト鵜久森 球団35年ぶり代打サヨナラ満弾

[ 2017年4月3日 05:30 ]

セ・リーグ   ヤクルト8―4DeNA ( 2017年4月2日    神宮 )

<ヤ・D>延長10回1死満塁、左越えに代打サヨナラ満塁弾を放つ鵜久森
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 ペットボトルを手にした仲間が待ち受ける。ヤクルト・鵜久森は身を預けるように生還した。水をかけられ、頭や尻を何度も叩かれた。「めっちゃ寒かった。(でも)喜びの方が大きい」。プロ13年目で初のサヨナラ打が代打満塁弾。劇的勝利の主役になった。

 4―4の延長10回1死、塁は全て埋まっていた。「あそこで使ってもらえることを意気に感じました」。高ぶりかけた気持ちを「犠牲フライでも1点。コンパクトに」と抑えた。バットを指2本分、短く持った。DeNA・須田の初球、141キロ直球を捉えた打球が左翼席中段に飛び込んだ。9回1死満塁で3番・山田、4番・バレンティンが決められずに突入した延長戦でのドラマ。代打サヨナラ満塁弾は82年の岩下正明以来、球団35年ぶりの快挙だった。

 「一回クビになっている。拾ってもらった。喜びを感じ、日々、恩返ししたいと思っている」

 15年オフに日本ハムを戦力外となり、トライアウトを経てヤクルトに入団した。背番号91。関係者から「野村克也さんが“足して10になる番号は縁起がいい”と言っていた」という話を聞かされた。「そういえば松井秀喜さんも55で、足したら10」。縁のなかった「91」の見え方が変わった。「活躍して91を自分の番号にしたい」と心の奥に秘めた。

 9回には大松が代打で移籍後初安打を放った。昨オフにロッテを戦力外になり、自分と同じようにヤクルトで新天地を得た34歳。ひたむきな姿は「凄く刺激になる」という。「役割がある。役割を考えて準備するだけ」。今のそれは、左の大松と並ぶ右の代打だ。1打席で結果を残すため、早出特打を行う。

 開幕4連敗で出遅れた昨年、5試合目で初めて先発起用されると本塁打を放って初勝利に貢献した。今季は開幕カード勝ち越しを決める一発。真中監督も「最後の切り札として期待している」と信頼する。一発勝負の代打。勝利のためにバットを振る。 (川手 達矢)

 ◆鵜久森 淳志 (うぐもり・あつし)1987年(昭62)2月1日、愛媛県生まれの30歳。済美3年時に4番として春夏連続で甲子園に出場し春は初出場初優勝、夏は準優勝。05年ドラフト8巡目で日本ハム入団。12年にイースタン・リーグで本塁打王を獲得。ヤクルトに移籍した昨季は46試合で打率.257、4本塁打、19打点。1メートル89、85キロ。右投げ右打ち。

 ≪史上16人目!球団では82年岩下以来≫鵜久森(ヤ)が10回に代打満塁サヨナラ弾。代打満塁サヨナラ本塁打は史上16人目、セ10人目で、ヤクルトでは82年4月6日広島戦の岩下に次ぎ35年ぶり2人目となった。また、延長回で打ったのは史上6人目で、開幕カードでいきなりの代打満塁サヨナラ本塁打は鵜久森が初めてだ。一方、打たれたのは須田(D)で登板初球。対戦1人目に代打満塁サヨナラ本塁打を浴びたのは70年7月29日阪神戦の松岡(ヤ=4球目)、98年7月7日オリックス戦の近藤(ロ=3球目)に次ぎ3人目だが、初球は初。

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