【石井一久 クロスファイア】野球界発展のためWBCをより魅力的なものに

[ 2017年3月29日 11:30 ]

WBC初優勝を決めた米国ナイン(AP)
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 WBCの準決勝をロサンゼルスで取材した後、アリゾナのレンジャーズのキャンプ地を訪問した。米国の初優勝で幕を閉じた第4回大会。現地でも「今回はメジャーリーガーの中でのWBCへの意識が一段階上がった」という声が多かった。ダルビッシュも「米国は今まで勝っていなかったから“俺たちは本気でやってない”と言えたけど、勝ってくれたことで“どうだ”となって、次も力を入れてくると思う」と話していた。

 WBCはまだ、サッカーのW杯ほど確立されていない。例えば、大会方式。極東ラウンドの8チームと北米ラウンドの8チームでは明らかにレベルの差があった。日本にしても、環境の違う米国に移動して一発勝負というのは難しい。間隔が空いて練習試合が入ったりすることで多少、熱も冷めてしまう。真の実力を競うには、やはりサッカーのように1カ所でやるのがいい。ロサンゼルス近郊ならメジャーの球場は3つあるので可能だ。

 とはいえ、入場料や広告収入などのそろばん勘定を抜きにしても、日本で一部が開催されることの意味は大きい。テレビ視聴率は軒並み20%を超えたように、野球ファンはドキドキワクワクし、野球を知らない人も興味を持った。野球少年たちは、侍ジャパンの試合を見て「明日、練習を1セット増やそう」とか、体がうずくような感覚になったと思う。

 日本野球の将来を考えた時、若年層の野球離れが進み、野球人口は逆ピラミッドのようになりつつある。土台がしっかりしていないと、いつか他のスポーツに逆転されてしまうかもしれない。WBCは野球人口を正常なピラミッドに戻す機会だと思う。できれば、4年に1度ではなく、3年に1度くらいでもいい。その間にプレミア12もあり、バランスは難しいが、やはりトップのWBCが魅力的なものにならないと、野球界の発展にはつながっていかない。

 日本は米国に1点差で負けたが、選手はそれ以上の力の差を感じて帰国し、選手個々がこの差を縮めようと努力するだろう。米国は優勝したことで、次も手を抜けなくなった。いろいろ問題点もあるが、WBCは正しい方向に進んでいると思う。 (スポニチ本紙評論家)

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2017年3月29日のニュース