「リプレー検証」NPBとMLBの違い 制度導入の趣旨を明確に

[ 2017年3月29日 12:15 ]

WBC日本代表・菊池
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 この判定の変更は致し方ないと思った人が多いだろう。大きな注目を集めたWBC準決勝の米国戦。3回無死一塁の日本の守備で、三ゴロでいったんは併殺の判定が出たが、二塁手・菊池の離塁が早く二塁がセーフに覆った。リプレー検証を見れば、三塁手の送球を捕る前に菊池の足が離れているのは明らかだった。

 すべてのプレーにリプレー検証を行う可能性のある大リーグならではだが、反響の大きかった試合で、アウト、セーフが覆ったことを見て、はっとした日本球界関係者は少なくないはずだ。

 日本でも、2017年の公認野球規則に「併殺を試みる塁へのスライディング」の項目が加えられた。“併殺阻止の危険なスライディング禁止”へ、リプレー検証も行うことが決まった。公認野球規則に加わる6・01(j)には走者が併殺阻止のために、正しいスライディングをせずに野手に接触、または接触しようとした場合に守備妨害が宣告される。審判団にとっては「危険なスライディング」に関して守備妨害を適用する明確な基準が生まれたが、違った部分で混乱が生じる可能性がある。

 リプレー検証は「スライディングの正否の判断に疑義が生じた場合」に当該試合の責任審判員の判断で行う。つまり、アウト、セーフの検証には用いないということだ。だが、球界関係者の1人は「二塁の危険なスライディングがあったかどうかを見るだけのものということは理解している。だが、同時にアウト、セーフの状況もリプレー映像で見えてしまった時に、違った感じ方をしてしまうのではないか」と指摘する。不利な判定を受けていた球団は、引き下がれるだろうか。そしてファンの方々も、納得できるだろうか。

 今回の制度導入の一番の目的は「選手の安全確保」。そこだけは球団、プレーする現場、そして見る側も忘れてはいけない。リプレー映像を目にしてアウト、セーフを論じることになっては制度導入の趣旨から外れてしまう。

 日米で制度の違いがあることに対する是非は、シーズン終了後の課題とするとして、31日にシーズンは開幕する。昨年の本塁上のクロスプレーのような制度上の理解度の違いによる混乱だけは起こしてほしくはない。(記者コラム・倉橋 憲史)

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2017年3月29日のニュース