本拠地と同形状のメジャーキャンプ地、若手発掘へ その大きな意味とは…

[ 2017年3月26日 10:10 ]

ヤンキースタジアムと同じ形状のスタインブレナー・フィールド
Photo By スポニチ

 ヤンキースのキャンプ地、フロリダ州タンパにあるスタインブレナー・フィールドはオフ、大規模な改装を行った。正面入り口のグッズショップを2階建てとし、ラグジュアリー感を増した。

 それだけではない。かつては無人だった外野フェンスの向こうには、新スタンドが並び立った。それに伴い、右翼のフェンスは約1メートル前に出た。球場の形状を、2009年に開場した現ヤンキースタジアムにピタリと合わせるためだという。

 08年に現球場名に改められるまで、同スタジアムはレジェンズ・フィールドと呼ばれていた。96年に開場。ヤ軍はその年に16年ぶりの地区優勝を果たし、ワールドシリーズも18年ぶりに制覇した。そこから5年間で4度のワールドチャンピオンという、文字通り伝説の始まりとなったキャンプ地だった。

 最大の触れ込みは08年限りで閉場した旧ヤンキースタジアムと、球場の形状が全く同じこと。デーゲームも想定し、球場の向きを調整することで太陽光の差し込む角度なども、ほぼ再現させたという。

 その効果がいくばくかは計り知れない部分もある。田中は今キャンプの改装で現スタジアムと形状が全く同じになったことを問われ「聞かれるまで、知りませんでした。雰囲気とかはどうしても一緒ではないし」と苦笑い。マウンドからの景色は当然違うだろう。加えて以前のキャンプ地が旧スタジアムと同じ形状だったことも「それも今、初めて知りました」と笑顔で素直に打ち明けた。

 もっともキャンプは彼ら主力の調整の場であると同時に、無数の若手の発掘の場でもある。マイナー契約で招待選手のカイル・ヒガシオカ捕手は日系3世の27歳。08年にドラフト7巡目で指名された。メジャー経験はまだないが、ヤ軍傘下在籍10年目を迎え、最古参に近い。「いつかヤンキースタジアムで田中投手の球を受けたい」と意気込み、「そのためにこのキャンプでの経験が大事になる。全ての話、光景を頭にたたき込みたい」という。彼らのようなマイナー選手には「夢」であり「目標」を意識するためにも、ニューヨークの本球場と同じ設定にしたのは大いに意味がある。

 ヤ軍に限らず、メジャー各球団のキャンプ地は、同様に芝の品種や丈、土質など、本拠地を意識してセッティングされることが多い。そうしたこだわりは日本プロ野球ではあまり耳にしたことがない。40人枠外のマイナー選手がメジャーで1日でもプレーするためには契約をメジャー契約として切り替える必要があり、球団には手間もお金もかかる。その分、壁は高い。簡単には踏めない本拠球場のエッセンスを、雰囲気だけでもキャンプから味わわせることは、育成という大きな観点からも一役買っている。(記者コラム・後藤 茂樹)

続きを表示

2017年3月26日のニュース