【石井一久クロスファイア】昔と変わらず型破り ガニエの91マイル

[ 2017年3月15日 10:00 ]

カナダ代表として現役復帰したガニエ
Photo By AP

 WBC1次ラウンドC組で残念ながら3連敗で敗退となったカナダだが、その中に懐かしい投手がいた。かつて一世を風靡(ふうび)したクローザーで、ドジャース時代に同僚だったエリック・ガニエ投手(41)だ。10年に引退したが、母国の代表として一時的に現役復帰。トレードマークのゴーグルはなかったが、顎ヒゲはそのままで、跳びはねるように投げる感じは昔と変わらない。

 11日のコロンビア戦に登板し、2回1/3を1安打無失点で2奪三振。真っすぐが91マイル(約146キロ)も出ていたことに驚いた。野球はある意味、つぶしが利かないスポーツ。サッカー選手なら、引退して数年たっても、少年少女にテクニックを見せたりすることはできるが、今の僕は「140キロの球を見せて」と言われても、絶対に無理。ガニエは昨年、独立リーグで1試合投げたようだが、ほぼ7年間のブランクがあって、あれだけの速球を投げるのは、凄いとしか言いようがない。

 これまで見てきたクローザーの中でも、間違いなくNo・1。僕がドジャースに在籍していた02年から04年にかけては84連続セーブ機会成功の大リーグ記録を樹立し、彼のおかげでいくつも白星を手にできた。ガニエが9回に出てくると、「試合は終わり」との意味で、ビジョンに「GAME OVER」と表示される。あの登場シーンは本当に格好良かった。全てにおいて型破り。帽子は汚れようが、汗で塩が吹こうが、シーズン中は一度も洗わない。試合後はアイシングもせず、一番最後に投げたのに一番最初に帰る選手だった。

 WBCで復帰した理由は分からないが、本当に野球が好きなんだと思う。ガニエの場合、絶頂期は3、4年で、その後はトミー・ジョン手術を受けたり、ドーピング疑惑もあった。思った球が投げられなかったり、いろいろなことに嫌気がさして野球界を離れたように、僕には感じた。でも、野球への情熱は捨てられなかったのではないか。

 前回13年のWBCはフランス代表のコーチ、そして今回は投手としてマウンドに立った。本当の「GAME OVER」はまだ先かもしれない。(スポニチ本紙評論家)

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2017年3月15日のニュース