石井一久氏が侍Jの2戦目解説 先発の役割果たした菅野、打線は機動力発揮に期待

[ 2017年3月8日 23:13 ]

<オーストラリア・日本>小久保監督(左)と握手を交わす菅野
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 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は8日、東京ドームで第1次ラウンドB組の日本代表がオーストラリアと対戦。4―1で連勝を飾った。侍ジャパン第2戦をスポニチ評論家の石井一久氏がライブ解説で分析した。

▼試合結果
侍000 010 120|4
オ010 000 000|1

【試合総括】 一発勝負に近い短期決戦では、やはり投手力を含めたディフェンスが大事。その意味では、菅野が先発の役割を果たして、しっかり試合を作ったので、膠(こう)着した試合の中でも攻撃陣は落ち着いてできた。

 3点リードの9回は、先頭の鈴木が出塁し、スタートを切った。サインは盗塁だったのか、ヒットエンドランだったのか分からないが、「仕掛ける」という練習ができたのはよかった。この日は2本の効果的な本塁打があったが、投手のレベルが上がれば、なかなか一発は期待できない。足の速い選手もそろっているので、機動力もどんどん使っていってほしい。

 継投の面で言えば、5回1死一、二塁から登板した岡田がポイントだった。おそらくベンチの計算は、菅野が65球の中で1番打者まで投げて、2番の左打者で岡田をぶつける考えだったのだろう。ところが、菅野が9番打者に9球を要してしまい、そこで交代となった。

 一緒にブルペンで投げていた千賀をイニング頭の6回からと決めていたのなら、平野、増井ら右のワンポイントも準備させておくべきだった。結果的に岡田は右打者に四球を与えて満塁のピンチを招きながら、何とか併殺で切り抜けたが、一つ間違えば試合展開は変わっていた。

 左腕では松井裕がこの2試合でまだ登板がないが、小久保監督の左腕の優先順位で言えば、宮西を今後も大事な場面で使うのだろう。8回の投球を見ると、そのメドは立ったと思う。

【9回】<5番手でマウンドに上がった牧田が3者凡退に抑え3点リードを守った>

 最後は牧田だったが、持ち味のテンポの良さで、相手に考えさせない投球ができていた。監督からしてみれば、絶対に大ケガはしない投手。ただ、この試合の起用を見ても、後ろの投手はその日その日の状況を見てということなのだろう。悪い言い方をすれば、まだ形が見えていない。プラスに言えば、誰でもできるということ。いずれにしても、2連勝でいい形で1次ラウンドを突破できそうだ。

【8回】<筒香が2戦連発となる2ラン。投手は千賀から4番手・宮西へ。3者凡退に仕留める>

 筒香は2試合連続アーチとなったが、初戦の初回のタイムリーを見た時は、慎重になっているのか、いつもよりバットの出が悪いように見えた。元々、積極的にいくタイプではなく、相手の投球を見ながら仕留めるタイプの打者だが、この本塁打は内角低めの球にバットのヘッドがしっかり走って右翼ポール際に放り込むことができた。その意味では、今後さらに爆発しそうな予感がする。

 あとは2死で2ストライクと追い込まれながら四球を選んだ青木の貢献も見逃せない。3番に入っているが、スラッガーとして呼ばれているわけではないことをしっかり分かっている。出塁を心掛けているメジャーでの役割と同じことができている。

 宮西は打者にボールを遠くに見せる投球ができる。右打者にはシンカー系に落ちる球。左打者には外に逃げていくスライダーがあって、そこから次の球で内角に差し込むこともできるし、もう1球、外に速球でストライクを取ることもできる。打者を「金縛り」にさせるような投球だ。経験も豊富だし、右打者にも左打者にも安心して見ていられる。

【7回】<中田の左越えソロで勝ち越し。千賀2イニング目も好投>

 中田はさすが打点王という一発。特に走者がいない時は思い切ったスイングができる。変わったばかりの投手で、当然データもあったと思うが、そういうのを関係なしに初球から自分のスイングができるのが強みだ。

 千賀は6回同様に直球主体の投球。たまに投げるフォークがその打者だけでなく、次の打者にも印象づけているので、真っすぐで差し込めている。残り2イニング。この先もクロスゲームは必ずある。世界一奪回には接戦を勝ちきらないといけないので、ここからの継投が見物だ。

【6回】<菊池、青木、筒香で3者凡退。投手は岡田から3番手・千賀へ。走者許すも3つの三振を奪う>

 3番手の千賀は無駄にフォークに頼らず、真っすぐで主導権を取れているのがいい。真っすぐが効いているので、いいところでフォークが使える。この後の継投をどうするのか。膠(こう)着状態の時は、こっちから動く必要はない。球数制限という問題はあるが、7回も千賀でいいのではないか。

【5回】<無死一、三塁の好機。相手投手交代後、松田の犠飛で同点に追いつく。菅野は1死一、二塁の場面で2番手・岡田に交代。岡田は満塁のピンチを招くも併殺で切り抜ける>

 菅野は球数制限に達しての交代となったが、この回になって、スライダーのブレーキがやや甘くなっていたので、球数を費やしてしまった。ただ、安定感はさすがだった。この場面で救援した岡田は、マウンドで少しびびっているように見えた。同じ左腕なら宮西もいるが、ブルペンでスタンバイしていなかった。左打者へのワンポイントなら岡田でもいいが、2人、3人投げるなら、宮西の方が経験が豊富だ。左では松井裕がいるだけに、宮西は早めのイニングの大事な場面で投入できる準備をさせておいた方がいいのではないか。結果論では言いたくないが、結果論としてはピンチを切り抜けたので、岡田で良かった。

【4回】<またまた3者凡退で日本は12人連続アウト。菅野は粘投>

 菅野は1死二塁と得点圏に走者を背負って、ストライクゾーンへのフォーカスが一つ高まった。ケネリーの見逃し三振は、スライダーに的を絞っている相手の裏をかいた内角球。続く左打者のウェルチには、決め球は絶対にバットに当てさせないというワンバウンドの縦のスライダー。2つとも三振の取り方がいい。コントロールに細心の注意を払いながらも、球に力があった。

【3回】<日本は2イニング連続3者凡退も、菅野が相手打線を3者凡退に抑える>

 アサートンは角度があって、やはり真っすぐに力がある。日本の打者は捉えたと思っても、自分のミートポイントよりわずかに差し込まれている。山田の左飛もそうだった。とにかく真っすぐに力負けしないこと。真っすぐに強い松田あたりに期待したい。

【2回】<坂本、鈴木、松田は3者凡退。菅野はデサンミゲルに先制ソロを許す>

 菅野は懸念していた右打者への甘いスライダーを本塁打されてしまった。初回はもう一つ低く決まっていたが、あの場面は高かった。逆に言えば、オーストラリア打線が打てるのは、右打者のあのコースだけ。左打者には内角にいい真っすぐで突っ込めているので、心配はない。右打者への失投だけが怖い。

【初回】<1死二、三塁。絶好の先制機も4番・筒香が空振り三振、5番・中田が三ゴロで無得点。先発・菅野は無失点と安定した立ち上がり>

 オーストラリア先発のアサートンは球が高いが、あの高さに行けば、筒香を空振りさせるだけのパワーはある。あとは、ドローンとした大きな縦のカーブが特徴。序盤はそのカーブをためて打つのか、あるいは高めの直球に力負けしないように狙うのか、その見極めがポイントになりそう。

 菅野は調子の良さを示すように、しっかりコントロールできている。怖いのは、右打者へのスライダーが抜けて半速球のになった時ぐらい。それほどスキがない立ち上がりと言っていい。

 ▼日本代表先発 1番・DH 山田、2番・二塁 菊池、3番・中堅 青木、4番・左翼 筒香、5番・一塁 中田、6番・遊撃 坂本、7番・右翼・鈴木、8番・三塁 松田、9番・捕手 小林、投手 菅野

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