江夏が思う「青春」の苦悩 捕手の攻守両立は難しい

[ 2017年2月22日 08:30 ]

江夏豊氏は宜野座キャンプを訪れる
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 【内田雅也の追球】江夏豊が阪神キャンプ地の沖縄・宜野座にやってきた。17日以来2度目の訪問。テレビ局の取材で監督・金本知憲と対談を行っていた。

 ドーム内での収録後、「聞いていたか?」と問われた。立ち入り禁止区域で遠くて聞こえなかった。「そうか」と対談の感想を口にした。「監督も選手を絞り込んでいかないといかん。大変じゃないかな」と思いやった。レギュラー確約は右翼・福留孝介と中堅・糸井嘉男だけである。

 「中心線を早く決めないかんわね」。捕手―二塁手・遊撃手―中堅手を指している。「特に捕手だよな。捕手がころころ代わるのはよくない」

 OBとしての心配もあるのだろう。気になる問題点を指摘した。「競争で、誰が正捕手になるのか、というのは今の時期の魅力でもあるんだろうけど……」。捕手は岡崎太一、梅野隆太郎、原口文仁、坂本誠志郎の4人で争っている。

 「原口君が――」と言った。昨年も書いたが、江夏は選手を君付けで呼ぶ。自身が阪神2年目当時の投手コーチ・林義一から「江夏君」「ユタカ君」と呼ばれ、上から押さえつけない指導法に共感を覚えた。

 江夏は昨年11月末のOB会総会で原口に会った際「打つこと主眼でやりたいのか、捕手でいきたいのか」と聞いた。「はっきり“捕手が好きです”と言っていたよ。ならば、打撃は少々犠牲にしても、守りを主眼にやらないとね。特に自分は投手出身だから、その気が強いんだけどね」

 原口は一塁も練習している。「一塁手だと30本、2割8分は打たんと」と要求は高い。両方できないのかと、あえて聞くと「なかなか難しいだろうな。捕手で4打席目となるとフラフラだろう。けがも多い。大変だよ」と目を遠くにやった。

 恐らく思い描いたのは田淵幸一(本紙評論家)だ。その田淵も2割8分・30本をクリアしたのは3度(阪神で2度、西武で1度)しかない。4番を打つ重責にリード、キャッチング、盗塁阻止……さらに度重なる故障禍と、田淵の苦労が思い浮かんだのだろう。他に好リードの「ダンプ」辻恭彦もおり、田淵は一塁に回ることもあった。捕手の攻守両立は難しい。

 もう68歳の江夏も70歳の田淵も阪神での日々を「青春だった」と懐かしむ。いま、原口は苦労し金本は悩む。江夏は青春の苦悩として、思いやっていた。 =敬称略=(編集委員)

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2017年2月22日のニュース