ヤクルトの未来担う156キロ右腕・星に石井氏が金言「信じられるボールを」

[ 2017年2月21日 08:05 ]

石井氏(右)と対談するヤクルト・星
Photo By スポニチ

 ヤクルトのドラフト2位ルーキー・星知弥投手(22=明大)の評価が高い。最速156キロを誇る右腕で、昨年11月の明治神宮外苑創建90年記念試合では、チームメートとなる山田哲人内野手(24)を自慢の直球で空振り三振に仕留めた。首脳陣は抑え候補の一人としても期待。ヤクルトに久々に現れたパワーピッチャーに、かつてのエース、石井一久氏(43)が直撃した。(構成・甘利 陽一)

 石井 キャンプも終盤に入ってきたけど、もう慣れた?

 星 そうですね。第2クールの中盤くらいから。第3クールから自分のやりたいことはできるようになってきました。

 石井 野球が「仕事」になったという実感は。

 星 結果が全ての世界なので、結果を出していかなければいけないというのはあります。

 石井 1年目は、ケガをしないことも大事。体の部分で気をつけたりしていることはある?

 星 僕の中で股関節と腰が張ってくると、肩とか肘にも来やすいので、2つのポイントだけはしっかり気にしています。

 石井 真中監督とも話したけど、「抑えも面白い」って期待していたよ。同じ栃木の出身なんでしょ?何か言われた?

 星 入団会見の時に「栃木のどこだ」と聞かれたので(那珂川町と)答えたら、「俺のところ(大田原市)より田舎だな」と(笑い)。

 石井 そんなに変わらないんじゃない。どんぐりの背比べでしょ。

 星 変わらないですけど、僕の実家の方が田舎です(笑い)。

 石井 プロで生き抜くための自分の長所はどう考えているのかな。

 星 真っすぐです。(首脳陣に)見てもらうセールスポイントでもあるし、一番自信のある球でもあります。

 石井 理想の真っすぐは?

 星 阪神の藤川(球児)投手の真っすぐです。

 石井 相手が真っすぐを狙っていても、空振りを取れる真っすぐ、ね。最速は156キロと聞いたけど、160キロとか、球速へのこだわりはある?

 星 160キロに意識がないと言えばなくはないですが、僕はやっぱり質にこだわっていきたいです。高めの真っすぐでファウルは取れると思うんですけど、空振りを取れる真っすぐ。スピードが出ても打たれてしまっては意味がない。コントロールもまだアバウトなので、ここ一番の勝負の時にしっかりコーナーに決められないといけないと思います。

 石井 最終目標は抑えだと思うけど、絶対的なクローザーの条件としては、一つは速いボールを投げられることで、その能力は既に持っていると思う。次に必要なのは絶対的な変化球。この2つがあれば通用する。変化球の決め球は?

 星 フォークボールで勝負したいです。でも今は通用するレベルにはない。そこは身につけていかないといけない部分です。石井さんは調子が悪かった時は修正ポイントとして、どのあたりを意識していましたか?

 石井 リリーフは試合の中で修正していくのはなかなか難しい。15球、多くても20球で終わってしまうので。僕も入団3年目にリリーフをやったけど、信じられるボールを早く見つけること。僕の場合、(左打者の)アウトコースのスライダーでポンとストライクを取れる自信があった。絶対的なボールを一つ持つと、自分を信じられなくなることはない。パニクらないからね。

 星 僕もマウンドに上がって、調子がよくないと感じた時の「引き出し」は持っていた方がいいと思っています。

 石井 ブルペンとマウンドは違う。ブルペンで良くても、マウンドに上がったらダメな時もある。投球練習の中で、なるべく早くそれを察知すること。特にリリーフは。「今日は真っすぐが入らないな」と感じた時にどうするか。1球目はダメでも2球目から修正できる。リリーフは結果が全てで、3つ四球を出しても4つ目のベースを踏ませなければいい。3つで止まらせる修正能力は大事だと思う。

 星 先発をやりたい気持ちもありますが、抑えはゲームを締める大事な役割。そこに魅力を感じています。

 石井 1年目だから先輩の勝ちを消すこともある。でも、先輩は絶対に「いいよ」って言ってくれる。ヤクルトは優しい先輩ばかりだから。そこでうまく切り替えられることが大事。最後に1年目の目標を色紙に書いて。

 星 新人王です。数字的には後ろをやる上で防御率は大事なので、2点台にとどめたいです。

 ≪己の実力を理解して鮮明な将来像を持つ選手≫ヤクルトの沖縄・浦添キャンプで星の評判について聞いたが、真中監督ら首脳陣だけでなく、ベテランの石川も「いいですよ。とにかく球が速いです」と高く評価していた。話してみての印象は、落ち着いていて、足元をしっかり見られる投手。1年目のルーキーの中には、夢に見た世界に飛び込んだことで、ふわっとした感覚で遠くにある蜃気楼(しんきろう)のような目標をつかもうとしてしまう選手もいる。でも星は、今の実力を理解した上で、「こういう投手になりたい」「ここの精度を上げたい」というのをしっかり持っている。

 侍ジャパンの秋吉がいるので、いきなり抑えは無理かもしれない。でも直球の速さや質だったり、抑えの資質は十分に持っている。ヤクルトでは久々のパワー系クローザーとして期待したい。 (本紙評論家)

 ◆星 知弥(ほし・ともや)1994年(平6)4月15日、栃木県生まれの22歳。小4で野球を始め、宇都宮工では2年秋からエース。3年夏の栃木大会で最速150キロを計測したが、甲子園出場なし。明大では1年春からリーグ戦に登板し、通算成績は46試合で4勝5敗、防御率2・59。4年秋の明治神宮大会では決勝で本塁打を放ち、優勝に貢献した。1メートル83、78キロ。右投げ右打ち。

続きを表示

この記事のフォト

2017年2月21日のニュース