開幕1軍サバイバルを迎えるヤクルトの苦労人、ドラ6菊沢に注目

[ 2017年2月16日 10:20 ]

フリー打撃で登板するヤクルト・菊沢
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 ここからが、本当の戦いだ。福島県いわき市に本社を構える相双リテックの軟式野球部から、ドラフト6位で入団したヤクルト・菊沢。軟式出身のオールドルーキーは投げるたびに評価を上げている。いよいよ、17日のDeNAとの練習試合(浦添)で初めて実戦マウンドに上がる。

 「毎日、野球をすることだけに集中できる。本当に幸せです」

 秋田高から立大に進学。3年秋には「ずっと我慢して投げていた」という右肘が限界を超え、じん帯再建手術を受けた。プロから声がかかることはなく、卒業後は「山崎製パン」に就職した。営業職に就き、神奈川県を中心に担当。早いときには早朝3時からトラックに商品を積み込み、取引先に配った。

 仕事と平行して社会人クラブチームの横浜金港クラブに所属。練習時間が限られる中で都市対抗予選で好投し「もっと野球に集中できたら、もう少し結果を出せるんじゃないか?」との思いが湧いた。くすぶっていた野球への情熱は抑えきれない。山崎製パンを約2年半で退社。14年に巨人の入団テストを受験した。

 合格したが、指名漏れ。事前に指名漏れのケースの説明も受けていたが「それでも、あきらめきれなかった」と今度は目を海外に向け、渡米する。独立リーグを経て、相双リテックに入社。軟式ながら最速は5キロ増の148キロを計測するなど努力を重ね、プロの道をこじ開けた。ヤクルトの新人では、歴代最年長となる28歳での入団だった。

 2月12日に打撃投手を務め、球界最速といわれるDeNA・久保と同等の1・02秒という超速クイックを披露。一気に注目を集めた。これは「真っすぐだけでは抑えられない。武器になるし、自分の投球を助けることになる」と強打者ぞろいの米国時代に編み出したものだという。遠回りした分、「経験」から生まれた引き出しは多い。

 17日の練習試合を皮切りに、実戦登板が続く。「内容にも結果にもこだわりたいです」。本当の勝負は、打者もバットが振れてくる3月のオープン戦だろう。ここで首脳陣の期待に応えることができるか。やっとの思いで夢のスタートラインに立った苦労人。開幕1軍という目標に向かい、全身全霊でぶつかる。 (記者コラム・川手 達矢)

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2017年2月16日のニュース