日本ハムの躍進を支える2人の「演出家」 V2へ「掛け算」の準備整う

[ 2017年2月6日 10:00 ]

練習を見守る栗山監督。後方は別メニューでジョギングする大谷
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 日本ハム担当として球団フロントやチームを取材していると、既成概念にとらわれない球団経営やチーム編成に驚かされる。そして近年の躍進を支える2人の「演出家」の存在の大きさも感じる。

 まずは栗山英樹監督だ。最近、印象的な言葉を聞いた。「うちは足し算ではなく、掛け算でなければ優勝できない」。支配下登録選手の上限は70人だが、例年65人前後で2軍選手の出場機会を確保し、育成選手はなし。外国人も1軍登録枠の4人を超えることは少ない。優勝のためには団結力や自己犠牲の精神などプラスアルファの要素が不可欠。それらを巧みに引き出すのが栗山監督だ。

 就任1年目の12年から選手との対話を欠かさず、大事な局面では監督室で熱い言葉を掛ける。自身の考えを的確な表現で伝える能力はキャスター時代に培われたものだろう。「歴史にヒントがある」と話すなど読書も好み、人間の「幅」も広げている。昨季は巨大戦力を誇るソフトバンクとの最大11・5ゲーム差を逆転してリーグ優勝と日本一を達成。選手との信頼関係はもちろん、大胆かつ的確な采配も光った。

 もうひとりは吉村浩ゼネラルマネジャー(GM)だ。大リーグのタイガースでGM補佐を務めるなど経験を積み、東京から北海道に本拠地移転して2年目の05年に入団。限られた資金でチームを強化するための2本柱を「スカウティング」と「育成」に設定し、緻密なドラフト戦略と個々の能力に合わせた細かい育成プランを確立した。花巻東卒業と同時にメジャー挑戦を希望していた大谷を12年ドラフトで1位指名し、その後の入団交渉で翻意させられたのも、確固たる育成プランと将来像を提示したからこそ。他球団で芽が出ていない有望株を積極的にトレードで獲得するなど効果的な補強も光る。

 日本一に輝いても球団方針は不変だ。今季からGM経験が豊富な前パドレスシニアアドバイザーのランディ・スミス氏とGM付シニアアドバイザーとして契約。メジャーから7年ぶりに日本球界に復帰した苦労人の村田、未完の大器の大田を巨人からトレードで獲得した。背番号18を返上した斎藤には1を提示して再スタートを切らせる。周囲を巻き込む化学反応、すなわち「掛け算」となる準備を整えた。

 日本ハムは北海道移転から昨季までの13年間で5度もリーグ優勝を達成した。現在、1軍は若手主体でアリゾナ州ピオリアでキャンプを行っている。フロントの一貫した編成方針と栗山監督のぶれない采配。今季は球団初の日本一連覇に挑む。(記者コラム・山田 忠範)

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2017年2月6日のニュース